パスワード不要の新認証技術「FIDO」の普及を図るため、日本でメーカーやサービスプロバイダーなどとの事業開発に乗り出す。
米NOK NOK Labs(NNL)は8月27日、日本でパスワードを使わない新しい認証技術「FIDO」の事業開発に乗り出すと発表した。既にNTTドコモが「FIDO」を使ったサービスを提供しており、同技術を活用したビジネスの拡大を目指す。
FIDOは、指紋や音声といった生体情報などを利用してスマートフォンなどの機器から安全に認証を行うことを目指す技術標準。推進団体の「FIDO Alliance」にはドコモやヤフーなど210社以上が参画している。NNLは6社の創設メンバーの1つで、認証プラットフォーム製品の「NNL S3」を開発するほか、FIDOのSDKやサポートをモバイルアプリ開発者や機器メーカーなどに提供。NNL S3はNTTドコモのサービスで採用されているという。
同日都内で会見したフィリップ・ダンケルバーガー社長兼CEOは、「FIDOはその開発および実装のフェーズを乗り越え、導入拡大を図る段階に来た。日本はスマートフォンが非常に普及している市場の1つであり、モバイルビジネスを手掛ける企業も非常に多く、FIDOの普及において重要な地域だ」と語った。
NTTドコモは5月に、「FIDO 1.0」技術仕様に基づく認証を「dゲーム」などのオンラインサービスへのログインや決済に導入済み。SamsungのGalaxy S6/S6 edgeや富士通のARROWS NX、シャープのAQUOS ZETAの4機種で、指紋や虹彩を利用した認証ができるようになった。
日本での事業開発を担当する宮園充ディレクターは、ウィンドリバーやインテルでマーケティング職を担当し、直近ではEMCジャパンのRSAセキュリティ事業本部長を務めた。「FIDOはまだ新しいが、パスワードを覚える必要がなく身近なデバイスで安全に認証できるなどユーザーにとってのメリットが大きい。日本でのエコシステムの形成に注力したい」と表明した。
FIDOはAlliance加盟各社が自社製品などで実装を進めており、例えば、GoogleはGoogleアカウントの認証でFIDO対応のUSBキーを利用できるようにしているほか、MicrosoftもWindows 10でFIDOをサポートしている。ダンケルバーガー氏は、「NNLも製品を提供しているが他社とは異なり、エコシステムの拡大を通じてFIDOがオープンスタンダードになることを推進する立場にある」と説明した。
同氏によれば、IT関連企業やメーカー以外の企業もFIDOを採用し始めたといい、海外では大手銀行がオンラインバンキングサービスの認証に導入。この銀行では将来的に、会計事務所などの協力企業とのシステム接続や社員の業務システム利用における認証にもFIDOを採用する計画だという。
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