プロジェクトチームの方向性を示すのもプロマネの大事な仕事です。そのためにもチームそのものの目標を示す“ビジョン”が必要になるわけですが、まず自分自身がワクワクしないようなメッセージでは、メンバーがついてくることはまずありません。
現代のプロマネは、昔よりも難しいといわれています。多様な人材や混沌とした状況に苦しみ、「自分は向かないんだ」と自信を失うこともあるでしょう。この連載は、プロマネになりたての人や、役職に就いたが“やることが山積みで、関係者の間で日々翻弄されている”人が、限られた権限やリソースの中で「ヒューマン/ビジネススキル」を使ってチームをよい状態へ導くことをテーマに、さまざまなスキルや活用法をご紹介します。
プロジェクトメンバーをまとめるために、プロマネは“チームの方向性”を打ち出さなければならない――。前回の記事ではそんなお話をしました。
チームの方向性は、主に対クライアント向けの「プロジェクトのゴール」、そして“プロジェクトチームそのもの”の目標を示す「チームのビジョン」という2つのメッセージに分けられます。
先方のニーズによる部分が大きい「プロジェクトのゴール」に対し、自分たちが定義する部分が多い「チームのビジョン」の作り方はやや分かりにくい部分があるでしょう。しかし、チームのビジョンなしにメンバーは能動的な行動は取れません。今回はビジョンの作り方に焦点を当て、解説を行っていきます。
「チームのビジョン」を一言で説明すると、チームの基軸となる基本的な方向性を示した指針です。一般的には以下の3要素で構成されます。
ビジョンと言うと、この3つ全てを含んだものをそう呼ぶこともあれば、このうちの“What”だけ、WhyとWhatの2つを組み合わせたものをビジョンとしている場合もあります。今回の記事では、3要素全てが入っているメッセージを考えることにします。
ビジョンとして有名なものには、ザ・リッツ・カールトンの企業理念「ゴールドスタンダード」などがありますが、いかに“ワクワクできる未来像”を見せるかが大切です。メンバーの皆に「いいね!」「実現したい!」と思われることで、初めて同じ方向を向いてもらえるのです。
こうしたビジョンを作り上げるときは、「未来(1年後やプロジェクト完了時など、設定しやすい場面でOK)にこうしたい!」という状態を想像し、言葉に置き換えるのが一般的です。その際に、以下のような点に注意すべきでしょう。
1つ目は「プロマネ自身のキャリアビジョンと関連付ける」こと。意外に思われる方もいるかもしれませんが、「このチームをこうしたい」と考えるときに、自分自身の目標にかすりもしない設定をしてしまっては、まずプロマネ自身のモチベーションが上がりません。自分自身は何を満たしたくて仕事をしているのか、このチームでどうありたいのかなど、ビジョンを立てる前に整理して考えるとよいです。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.