第29回 「スタートアップ」ってベンチャー企業のことでしょ?テクノロジーエバンジェリスト 小川大地の「ここが変だよ!? 日本のITインフラ」(2/2 ページ)

» 2015年10月02日 08時00分 公開
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スタートアップ企業と日本のベンチャー企業の違い

 “起業して大きな夢をつかむ”という意味で、日本にはかねてより同義で使われている言葉があります。「ベンチャー企業」です。

photo オフィスの雰囲気は日本のベンチャー企業と似ていますが……

 しかしながら、先ほどの外資系スタートアップに籍を置く知人は、そろってベンチャー企業と呼ばれることをいやがります。実は、私も意識しないとそう呼んでしまいがちですので、ちょっと整理をしてみましょう。このあたりは業界によって解釈がブレそうですので、ここではITインフラ周辺に限定させてください。

ベンチャー企業(日本独自)

 ベンチャー企業という言葉は和製英語、つまり日本独自だそうです。正しい語源は分かりませんが、言葉どおり“冒険”でしょう。日本企業という先入観からか、後述のスタートアップと比べるとどうしても堅実な印象があります。

 ネットベンチャーなどはまた違うのかもしれません。しかし、私の業界でのベンチャー企業の多くは、多くがフリーランスやSOHOスタイルの延長線にあり、数人のスーパーSEがキーとなってコンサルティングやアプリケーションの受託開発やSI派遣を手掛けているケースが多いようです。カテゴライズするとしたらSIerになると思います。

スタートアップ企業(欧米中心)

 欧米のスタートアップ企業には社員の多い少ないは関係ありません。事業内容やビジネスモデルがスタートアップであることが定義だったかと思います。特定のクライアント顧客のためにアプリを受託開発するというよりは、世の中全体に対してよいモノを作ろう、新しいサービスを作ろうという“メーカー指向”です。

 そして、最も興味深いのが「採算度外視」。スタートアップ企業の創業時メンバーは、事業利益や給与の不足分は株式公開やストックオプションや買収でペイできればいいや、というノリだそうです。家庭はどうするんだろうと心配になってしまいますが、それだけ画期的な製品を作ろう、メーカーを目指そうと、強い野心と背水の陣でがむしゃらに開発していると聞きます。

 メーカー指向となると、サービスやソフトウェアで事業化するか、ハードウェアで事業化するかがありますが、やはり前者が中心です。これは想像の付くとおり、後者は部品の仕入れや調達から製造開発・納品、故障交換、在庫リスクなどすべてが物理的な話であり、ハードルが高いためでしょう。しかしながら、中にはODMなどを駆使した優れたビジネスモデルと流通ルートを通じて、ハードウェア製品で事業化するスタートアップ企業も存在します。

 ベンチャーとスタートアップの差というより、日本発か欧米発かというお国柄の違いがありそうな気もしますが、私の周辺ではこのように整理できそうです。



 いくら、ビジネスモデルが優れていると言っても、採算度外視というのはビジネスパートナーはもちろん、売り手買い手の関係であっても腰が引けてしまいそうです。では、日本で展開している外資系スタートアップもそんなにイケイケな集団なのでしょうか?

(次回につづく)


小川大地(おがわ・だいち)

日本ヒューレット・パッカード株式会社 仮想化・統合基盤テクノロジーエバンジェリスト。SANストレージの製品開発部門にてBCP/DRやデータベースバックアップに関するエンジニアリングを経験後、2006年より日本HPに入社。x86サーバー製品のプリセールス部門に所属し、WindowsやVMwareといったOS、仮想化レイヤーのソリューションアーキテクトを担当。2015年現在は、ハードウェアとソフトウェアの両方の知見を生かし、お客様の仮想化基盤やインフラ統合の導入プロジェクトをシステムデザインの視点から支援している。Microsoft MVPを5年連続、VMware vExpertを4年連続で個人受賞。

カバーエリアは、x86サーバー、仮想化基盤、インフラ統合(コンバージドインフラストラクチャ)、データセンターインフラ設計、サイジング、災害対策、Windows基盤、デスクトップ仮想化、シンクライアントソリューション



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