クラウド事業好調、「SAPは“どうでもよくなった"」 ラリー・エリソンCTOOracle OpenWorld 2015 Report(2/2 ページ)

» 2015年10月26日 18時44分 公開
[岩城俊介ITmedia]
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SAPはクラウドではあまり聞かない IBMもどうでもよくなった

photo Oracle 経営執行役会長兼CTOのラリー・エリソン氏

 「これまでIBMとSAPがライバルだった。クラウドの時代になると、存在感がなくなった。もうどうでもよくなった」(エリソンCTO)

 初日の夕方に行われたオープニングキーノートで、Oracle CEOのマーク・ハード氏の挨拶、米Intel CEOのブライアン・グルザニッチCEOによるパートナー講演に続き、Oracleのラリー・エリソン経営執行役会長兼CTO(最高技術責任者)が登壇し、おなじみの少し過激な発言で会場を沸かせた。約1年前、CEOの座から退いて現職に着任した同氏は、昨年のOpenWorldで意欲を見せ、「No.1クラウドカンパニー」に向けたクラウド事業の拡大と認知が、2015年現在、着実に実を結んでいる状況を説明した。


photo Oracle CEOのマーク・ハード氏
photo 「3D XPoint」技術を説明するIntel CEOのブライアン・クルザニッチ氏

 2015年度第4四半期のSaaSとPaaSビジネスの売上高は4億2600万ドル(約514億円)。売上高約4.5兆円規模の同社にとって、クラウド事業は同社売上の年間5〜8%を占めるに過ぎないかもしれないが、対前年同期比で売上200%増、顧客も2014年10月の87社から、2259社(2015年10月末時点)まで増やした。

 Oracle Databaseもそうだが、ERP(統合業務システム)、HCM(人材・タレントマネジメント)、SFA(営業支援システム)、SCM(サプライチェーン管理)といったSaaSレイヤーのビジネスアプリケーションにおいて、売上の7割がこれまでオラクルユーザーでなかった、中小規模の新たな顧客だという。そして、SaaSベンダーとしては、OracleはSelasforce.comに次ぐ第2位の地位にすでにある。

 SaaSビジネスをドライブさせるには、PaaSが、つまりプラットフォームが必要。そしてインフラストラクチャであるIaaSも必要ということになる。この3レイヤーと、データベースも、プログラム言語も提供する会社はMicrosoftくらいしかないとエリソン氏。そして「競合はSalesforce.comとWorkdayに変わった。これらに対するOracle Cloudの強みは、プラットフォームを持っているか否か。オープンスタンダードのプラットフォームでなければうまくいかない」と優位性を語る。

photo Oracleは、SaaS、PaaS、IaaS、(DaaSも)全方位で提供する
photo Oracle Cloudの「6つの設計上のゴール」

 例えば、現行のOracle Databaseである「12c」は、クラウド対応を想定したマルチテナントアーキテクチャーを特徴とする。Oracle Cloudではすべてのアプリケーションのモバイル化やソーシャルメディア対応などが可能であり、Oracle Cloud上のあらゆるアプリケーションはプログラムコードを書き換えることなく、ボタンを押すだけでオンプレミスからクラウド、そしてクラウドからオンプレミスへ行き来できる。

 「Oracleのプラットフォームで作ったアプリは、クラウドでも、オンプレでも、他社クラウドでも使える。対してSalesorceのプラットフォームでは、そこでしか使えない(ベンダーロックインがある)」(エリソン氏)

 IaaSについても、Amazon Web Services(AWS)より低価格、少なくとも同等を目指し、技術の優位性を訴える。

 そのほか、講演の最後には、「Database In Memory Accelaration」、SaaSレイヤーにおけるSCM/PLMカテゴリの1つ「Manufacturing(製造業向け) Cloud」、同じくCXカテゴリの「E-Commmerce(eコマース) Cloud」、SaaSアプリケーションのマッシュアップを簡単にする「Easy to Extend SaaS Applications」、統一したコンシューマー機器のような「新モバイル機器向けの統一UI」、「Integrated Just-in-Time Learning System」、「Multitenant Database Cloud Scalability」、「Database In-Memory Acceraration」、「Database In-Memory On Active Data Guard」、「Exadata Cloud Service」、「Exadata In-Memory & In-Flash Database」、「Multitenant Java Server」、「Fault-Tolerant Java Server」、「Big Data Preparation, Discovery, Visualization Cloud Service」などが矢継ぎ早に発表された。これらの詳細についてはカンファレンス2日目以降で紹介される予定だ。

photo 「Integrated Just-in-Time Learning System」
photo 「Multitenant Database Cloud Scalability」
photo Database In-Memory Acceraration 12.2

 実はエリソンCTOの基調講演は、予定時間を約30分も超えた長丁場となり、最後の新サービスの発表が駆け足でサクッと終わってしまった。3日目の基調講演で“話す予定”のSaaSレイヤーの部分を予定外に多くしゃべりすぎてしまい、時間内に収まりきらなかったようだ。それだけクラウドについては「言っておかねばならない」ことがたくさんあるわけだ。

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