持ち歩きデバイスを減らしてTKCの働き方はどう変わったか?(2/2 ページ)

» 2016年01月29日 08時00分 公開
[國谷武史ITmedia]
前のページへ 1|2       

導入決定から1カ月でスタート

 iPhoneの導入を決定したのは2015年6月のこと。翌7月から社員への支給と利用を開始する。わずか1カ月という速さが可能だったのは、(1)VPNの再構築が不要、(2)社員のセルフキッティング文化――の2つがあったからだった。

 「従来のモバイルWi-Fiルータからの通信はVPNを経由させていましたが、iPhoneに移行してもそのままVPN基盤を利用できるので端末側の作業に集中できました」と金森氏。VPNにはiPhoneに証明書をインストールして端末認証で接続するようにしている。

 また、社員によるセルフキッティングはPCから行っており、iPhone導入でも同じく実施している。社員が円滑に作業できるようIT投資企画部ではマニュアルビデオを作成したり、全国各地の拠点とビデオ会議で講習会を開催したりしてきた。2015年12月から現場でのワークショップも始めた。

 「既に個人でスマートフォンを使っている社員も多く、スマートフォン自体への抵抗感は少ないようでした。ただしAndroidとiPhoneでは操作方法が大きく異なりますので、iPhoneの操作に慣れてもらう方法を工夫したり、セキュリティ強化のために会社支給のスマートフォンに切り替えることを説明したりすることに注力しました」(IT投資企画部課長代理の市川裕洋氏)

 iPhoneへの移行に対して、社員から直接的な評価は少ないものの、「便利になった」といった声が寄せられているという。「ITに対する不満の声は挙がりやすいのですが、iPhoneを使いたくないといったようなコメントは聞かれませんので、概ね順調なのかもしれませんね(笑)」(金森氏)

 iPhone導入は社員の働き方にも確実な変化をもたらしつつある。

情報を共有する文化に

 TKCではiPhoneとは別に、2014年9月にマイクロソフトのクラウドサービス「Office 365」を導入していた。iPhone導入によってOffice 365の利活用が本格化し、社員のワークスタイルが大きく変化した。

 例えば、IT投資企画部がiPhone導入のために作成したマニュアルビデオは、クラウドストレージのOneDriveにアップされ、全国の社員がどこからでも視聴できるようにしている。ビデオは複数あり、OneDrive上では再生回数などからおすすめのビデオが分かるため、社員がどのビデオを見れば作業しやすいのかが一目瞭然だ。そこから、OneDriveで情報を共有するメリットが社内に浸透し始め、各部署からも積極的に情報のアップと共有がなされるようになったという。

iPhoneのマニュアルビデオをはじめ、トップメッセージなどのさまざまな動画コンテンツがクラウドにアップされている

 「従来はメールにファイルを添付して共有していましたが、PCからでも、スマートフォンからでもOneDriveにアクセスして必要な情報を確認できるようになり、『共有する』という方法が大きく変わりました」(金森氏)

 メールについても、従来のモバイルWi-Fiルータの環境では都度PCを起動しなければならなかったが、iPhoneではすぐに閲覧したり送信したりできるようになった。スマートフォンとクラウドサービスの組み合わせによって、ビジネススピードの向上と情報共有の促進というメリットが実現した格好だ。

OneDrive上では部門などのフォルダが用意され、PCやiPhoneで共有・活用する文化が生まれた

 金森氏によれば、個人の携帯電話から会社支給のiPhoneに切り替えることによるコスト増はあるものの、社員のワークスタイル変化と業務効率の向上というメリットに十分に値する投資だと語る。今後はiPhoneの利活用を促進していくフォローアップ研修を実施し、導入先部門の拡大も検討していく予定だという。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ