Watson日本語版が提供開始、5つの産業分野を“狙い撃ち”エコシステム拡大に意欲(1/2 ページ)

IBMの認知型テクノロジー「Watson」の日本語化サービスが正式にスタート。6つのAPIを公開した。記者会見ではパートナー5社のデモが披露されるなど、「Watsonエコシステム」の拡張に意欲的な様子がうかがえる。

» 2016年02月19日 00時00分 公開
[池田憲弘ITmedia]

 30年前に大和研究所が生んだテキストマイニング技術が、今日本のビジネスに大きな影響を与えようとしている――。

 日本IBMとソフトバンクは2016年2月18日、認知型テクノロジー「Watson」の日本語化サービスの提供を開始し、以下の6つのAPIを公開した。これにより、ユーザーの意図をくんだ音声対話型のアプリケーションなどが開発可能になる。

  • 自然言語分類:質問方法が変わっても回答を見つけ出す製品やアプリを開発できる
  • 対話:人間が質問するときの個人的スタイルに合わせた会話を生み出す
  • 検索およびランク付け:機械学習を活用したデータ分析で情報検索精度を高める
  • 文書変換:PDFやWord、HTMLなど異なるフォーマットをWatsonで使える形式に変換
  • 音声認識
  • 音声合成

 記者会見では、アパレルショップを想定したアプリケーションのデモを披露。「こんにちは中野さん、今日はどのような商品をお探しですか」から始まる会話のやりとりから、Watsonが商品を推薦する動作の裏で、どのようにWatsonが判断を行っているのかを説明した。日本語版Watsonの反響は大きく、既に英語版を導入している企業に加え、新たに10数社と導入を契約したという。

photo Watson日本語サービスで提供される6つのAPIで、音声対話型のアプリケーションなどを開発できる
photophoto 記者会見では、アパレルショップを想定したアプリケーションのデモを披露。アプリケーションの裏でどのようにWatsonが判断を行っているのかを説明した

パートナーシップから1年でWatson日本語版をリリースへ

 2015年2月に両社が戦略的パートナーシップを結んでから約1年。日本IBMが日本語処理機能を実装し、ソフトバンクが業務利用を想定した検証を担当した。巨大なカスタマーセンターを持つ同社は「日本語版APIの検証を行う環境に向いていた」(ソフトバンク)とのことで、日本IBMのポール与那嶺社長も「短期間でリリースできたのはソフトバンクのおかげ」と太鼓判を押す。

 日本語版APIのリリースにあたって、与那嶺社長は「Watsonの原点は日本にある。約30年前に大和の研究所が開発したテキストマイニング技術(TAKMI)が米国に渡り、5年前にWatsonとしてクイズ番組『Jeopardy!』に世に出た。今回の日本語版は、里帰りのようなものと考えている」と振り返りつつ、日本語版Watsonへの期待を語った。

 「IoTやソーシャルなど、企業のデジタル化が進む昨今、データを理解できる企業が“勝ち組”になる。Watsonはデータを理解して推論し、提案することを繰り返し賢くなっていく。皆さんの企業もWatsonを使って社会に貢献し、グローバルにおける競争力を高めてほしい」(与那嶺氏)

photo 記者会見の様子。左から、日本IBMのポール与那嶺社長、ソフトバンクの宮内謙社長、IBM Watsonビジネス開発担当 シニア・バイスプレジデントのマイク・ローディン氏

 一方のソフトバンクの宮内謙社長は「この1年間は常にワクワクしてあっという間だった。ソフトバンクは全社員が最新のICTを活用し、新たな価値を生み出す『スマート経営』に取り組んでいるが、そこに一番フィットしているのがWatsonだ」とコメントした。

 ここ最近は、ソフトバンクや日本IBMが「Watsonハッカソン」を連続して開催するなど、開発者へアピールしつつ、Watsonの実用化に向けたアイデアを集めている。今後は、日本IBMも社内ハッカソンなどで2016年内に100のユースケースを作成し、ソフトバンクも社内でWatsonの業務利用に関する6つのプロジェクトが進んでいるという。

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