IBMの認知型テクノロジー「Watson」の日本語化サービスが正式にスタート。6つのAPIを公開した。記者会見ではパートナー5社のデモが披露されるなど、「Watsonエコシステム」の拡張に意欲的な様子がうかがえる。
30年前に大和研究所が生んだテキストマイニング技術が、今日本のビジネスに大きな影響を与えようとしている――。
日本IBMとソフトバンクは2016年2月18日、認知型テクノロジー「Watson」の日本語化サービスの提供を開始し、以下の6つのAPIを公開した。これにより、ユーザーの意図をくんだ音声対話型のアプリケーションなどが開発可能になる。
記者会見では、アパレルショップを想定したアプリケーションのデモを披露。「こんにちは中野さん、今日はどのような商品をお探しですか」から始まる会話のやりとりから、Watsonが商品を推薦する動作の裏で、どのようにWatsonが判断を行っているのかを説明した。日本語版Watsonの反響は大きく、既に英語版を導入している企業に加え、新たに10数社と導入を契約したという。
2015年2月に両社が戦略的パートナーシップを結んでから約1年。日本IBMが日本語処理機能を実装し、ソフトバンクが業務利用を想定した検証を担当した。巨大なカスタマーセンターを持つ同社は「日本語版APIの検証を行う環境に向いていた」(ソフトバンク)とのことで、日本IBMのポール与那嶺社長も「短期間でリリースできたのはソフトバンクのおかげ」と太鼓判を押す。
日本語版APIのリリースにあたって、与那嶺社長は「Watsonの原点は日本にある。約30年前に大和の研究所が開発したテキストマイニング技術(TAKMI)が米国に渡り、5年前にWatsonとしてクイズ番組『Jeopardy!』に世に出た。今回の日本語版は、里帰りのようなものと考えている」と振り返りつつ、日本語版Watsonへの期待を語った。
「IoTやソーシャルなど、企業のデジタル化が進む昨今、データを理解できる企業が“勝ち組”になる。Watsonはデータを理解して推論し、提案することを繰り返し賢くなっていく。皆さんの企業もWatsonを使って社会に貢献し、グローバルにおける競争力を高めてほしい」(与那嶺氏)
一方のソフトバンクの宮内謙社長は「この1年間は常にワクワクしてあっという間だった。ソフトバンクは全社員が最新のICTを活用し、新たな価値を生み出す『スマート経営』に取り組んでいるが、そこに一番フィットしているのがWatsonだ」とコメントした。
ここ最近は、ソフトバンクや日本IBMが「Watsonハッカソン」を連続して開催するなど、開発者へアピールしつつ、Watsonの実用化に向けたアイデアを集めている。今後は、日本IBMも社内ハッカソンなどで2016年内に100のユースケースを作成し、ソフトバンクも社内でWatsonの業務利用に関する6つのプロジェクトが進んでいるという。
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