第40回 「人月単価」で雇われるITコンサルタントテクノロジーエバンジェリスト 小川大地の「ここが変だよ!? 日本のITインフラ」(2/2 ページ)

» 2016年03月18日 08時00分 公開
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成功報酬型にしにくい日本のITコンサルタント

 コンサルタント一人一人に値札をつける管理職の気持ちになってみましょう。“知見”と“労力”をどのようにして値付け(価格設定)すればよいでしょうか。

 労力は簡単です。能力や職位などで時間給のように人月単価を設定し、「この優秀なコンサルタントを○○時間拘束したらxxx万円」というようにします。まるで、レンタカーみたいな明朗会計です。

 一方、知見はどうでしょうか。ノウハウの提供に、時間はあまり関係がありません。極端な例だと、他の人が考えもしないようなアイデア一言で解決できてしまう可能性もあり得ます。人月単価では適切な値付けができませんので、成果報酬型などで考えなければなりません。

 成果報酬については、弁護士をイメージしてみると良いでしょう。「裁判に勝ったら請求額の10%が弁護士報酬」みたいな報酬の受け方です。ITインフラの世界においても、欧米などではコンサルタントへの支払いについては成功報酬型が一般的です。ただしプロフェッショナルサービス部門でも、構築(SI)エンジニアは人月単価が一般的となっています。

 逆に日本はどうかというと、コンサルタントも構築エンジニアもプロジェクトマネージャーも人月単価が基本です。これはリスクがあるからです。

 成功報酬型では、成功しないと取引先から報酬を得ることはできません。優秀なコンサルタントが6カ月もの間、客先常駐した状態で進めていたプロジェクトが、何らかの理由で失敗・頓挫してしまったら―――会社は顧客から報酬を受け取ることはできませんが、その社員に毎月の給与を支払わなければなりません。

 こんなリスクは会社の経営上負担が大きすぎますし、株主も黙ってはいないでしょう。ですので、欧米ではITコンサルタント職が日本よりもずっと少ないのです。資金力でリスクを平準化できる大手ベンダーやコンサルファーム、もしくは株主の阻害を受けない未公開のスタートアップ企業程度しか在籍していません。

 最後に、意外にも人口の多い日本のITコンサルタントのカラクリについて触れておきます。

 日本はコンサルタントも構築エンジニアも同じ人月単価型ですので、融通しやすい。そうこうしていくと、その境界線が薄まります。構築プロジェクトが人手不足になれば、コンサルタントが「ちょっとお高い構築エンジニア」として現場に投入されたり、その逆もあり得たりします。

 スペシャリストは育ちにくいかもしれませんが、有償サービス部門として顧客に深く入り、“幅広い”体験をできるのが日本のITコンサルタントと言えそうです。

ここヘン 日本のプロフェッショナルサービスなら、アドバイザー業務に特化せず、構築プロジェクトまで体験できるかもしれません

小川大地(おがわ・だいち)

日本ヒューレット・パッカード株式会社 仮想化・統合基盤テクノロジーエバンジェリスト。SANストレージの製品開発部門にてBCP/DRやデータベースバックアップに関するエンジニアリングを経験後、2006年より日本HPに入社。x86サーバー製品のプリセールス部門に所属し、WindowsやVMwareといったOS、仮想化レイヤーのソリューションアーキテクトを担当。2015年現在は、ハードウェアとソフトウェアの両方の知見を生かし、お客様の仮想化基盤やインフラ統合の導入プロジェクトをシステムデザインの視点から支援している。Microsoft MVPを5年連続、VMware vExpertを4年連続で個人受賞。

カバーエリアは、x86サーバー、仮想化基盤、インフラ統合(コンバージドインフラストラクチャ)、データセンターインフラ設計、サイジング、災害対策、Windows基盤、デスクトップ仮想化、シンクライアントソリューション


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