本連載の第21回で紹介した米国立標準研究所(NIST)のビッグデータ相互運用性フレームワーク(下記の図2参照、関連情報PDF)からみると、AIの活用によるビッグデータ分析に特化したFinTechスタートアップ企業は、機械学習に必要なデータの収集から、準備/キュレーション、分析、可視化、アクセスまでのプロセスを担う「ビッグデータアプリケーションプロバイダー」に位置付けられる。
「ビッグデータアプリケーションプロバイダ−」としてのFinTechは、データの種類や送受信の頻度、セキュリティ/プライバシー要件(ポリシー、ユーザー認証/承認/アクセス制御など)がまちまちな「データプロバイダー」や「データコンシューマー」、さらにはHadoop、NoSQLに代表されるデータ基盤をクラウド型/オンプレミス型で提供する「ビッグデータフレームワークプロバイダー」と相対しながら、共通のインタフェースやAPIを開発・導入し、ユーザーエクスペリエンス(UX)を高めていかねばならない。特にAIの場合、ちょっとしたノイズやシステム障害でも分析結果に影響が出る可能性があり、注意が必要だ。
図3および下表は、「ビッグデータアプリケーションプロバイダー」が「データプロバイダー」や「データコンシューマー」「ビッグデータフレームワークプロバイダー」と連携するエコシステムに置いて、セキュリティ/プライバシー対策上留意すべき点を例示したものだ。
金融ビッグデータ分析のエコシステムにおけるセキュリティ/プライバシー対策では、「ビッグデータアプリケーションプロバイダー」とそれを取り巻くさまざまなプレイヤーとの間を調整する「システムオーケストレーター」役を誰が担うかが極めて重要である。
スタートアップ企業単独では、エコシステム全体の調整役を果たすことが難しい反面、規制当局や既存の大手金融機関が主導してITリスク管理に重点を置き過ぎると、FinTechによるイノベーションが阻害される可能性がある。FinTech各領域におけるイノベーションのライフサイクルに応じて、エコシステム全体でコンセンサスをとりながら、アクセルとブレーキを踏み分ける仕組みをつくることが、競争力強化に必須な要件となるだろう。
次回は、英国の欧州連合(EU)離脱問題がビッグデータに及ぼす影響について考察する。
宮崎県出身、千葉大学大学院医学薬学府博士課程修了(医薬学博士)。デジタルマーケティング全般(B2B/B2C)および健康医療/介護福祉/ライフサイエンス業界のガバナンス/リスク/コンプライアンス関連調査研究/コンサルティング実績を有し、クラウドセキュリティアライアンス、在日米国商工会議所などでビッグデータのセキュリティに関する啓発活動を行っている。
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