顔認識技術のダークサイド(3/3 ページ)

» 2016年09月24日 08時00分 公開
[Kaspersky Daily]
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5.セキュリティと災難は紙一重

 多くの専門家は、こう考えています。生体認証はパスワードに代わるものであり、世の中を安全にする。したがって将来、人々は複雑な記号の羅列を入力する代わりに、虹彩、指紋、顔画像までもシステムにスキャンさせようとするだろう、と。

 Microsoftは、自撮り画像で認証を受けられる技術を既に開発中です。NECは顔認識技術を使用して電子決済の安全性を確保する方法について研究しています(英語記事)。MasterCardは自撮り写真を使って本人確認し、パスワードなしで送金できるシステムの準備を進めています。

 指紋センサーの問題点については当ブログで以前取り上げたので、ここでは顔認識技術の弱点に論点を絞りましょう。この問題を突き詰めると、最先端の3D印刷にまで話が及びます。今では、印刷で人の顔を実にリアルに再現することができます。これから新たに本人確認システムを開発しようとする人は、本当に安全なソリューションを作りたいのであれば、この点を考慮に入れる必要があるでしょう。

 例えば、MasterCardとGoogleの本人確認では、まばたきをするよう求められます。単純なことですが、3D印刷で作った顔やただの顔写真を利用してシステムをあざむこうとする不正行為を阻止することができます。ただ残念ながら、Googleのソリューションは目的を果たせませんでした。単純なアニメーション画像を使ってセキュリティ手段の迂回に成功した人々がいたのです(英語記事)。MasterCardのシステムは開発途上なので、同じような抜け穴があるのかどうかはまだ分かっていません。

「同僚が私の顔を3D印刷しました」(画像はImgurから)

6.顔写真を知り合いと共有しないで

 「Anaface」について聞いたことがある方もいるかもしれません。写真を解析してどの程度美しい顔なのかを格付けするWebサイトです(英語サイト)。美しさの主な判断基準は対称性だそうですが、かなり怪しい基準だと思いませんか。例えば、アンジェリーナ・ジョリーをAnafaceで格付けすると10点満点中8.4点だそうです(英語記事)。もっとも、このサイトの問題は格付けの信頼性だけではありません。

 まず、Anafaceの運営元は、人々に美容整形を勧めるためにこのプロジェクトを開始したことを認めています。とりあえず、正直に認めたことだけは評価できそうです。

 2つ目の問題は、サイトの利用規約が読みにくく、分かりにくい点です。7000語以上の規約が小さなウィンドウに細かい字で表示されるので、何度もスクロールしないと読めません。このため、Anafaceにアップロードされた写真を使用するための「非独占的、譲渡可能、サブライセンス許諾可能、ロイヤリティ無料の世界ライセンス」はAnafaceにある、という文言を見逃す人がほとんどでしょう。分かりやすい言葉で言えば、利用者がアップロードした写真を、Anaface側は本来の所有者に支払い義務を追うことなく販売できるということです。

 同時に、利用者は自分が所有する写真だけをアップロードすることを誓約させられます。「他人の動画、音声付き写真、画像を含むコンテンツを、本人の許可(本人が未成年の場合は保護者の許可)なく投稿、アップロード、表示、その他の形で利用可能にしてはなりません」とあります。規約には、プライバシーと、ユーザーアカウント登録後の写真の削除についてのあいまいな記述もあります。しかしAnafaceは利用者が写真を削除することを認めておらず、誰も同サイトで写真を削除することはできません。

 結局のところ、政府、企業、一般の人々に至るまで、誰もが写真を集めているのです。誰でも顔認識システムを利用、濫用することができる時代です。私たちにできるのはとにかくそういう相手から身を隠すことだけです

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