IT方面で仕事する立場の人間として、気になったことを紹介しましょう。本書によると、SEが心に問題を抱える理由が、実は長時間労働などによるストレスではなく、「自分のスキルが業務で求められる技術水準にまで達していないこと」に起因するというのです。このようなケースは非常に多いということでした。
さらに、「なぜIT関連技術者には不調が多いのか」という章においても、120時間の残業が3カ月続く状況であっても、業務に必要なスキルを持ち合わせている人であれば不調に陥る人は少ないといいます。現在の“単に労働時間だけでメンタル問題を考える”ことへの問題提起になり得る事象を紹介するとともに、あらためてスキル不足を主要因とする主張が繰り返されているのです。
「不調になりやすい職業、なりにくい職業という」という章では、世の中には一定の範囲内で技術を取得すれば、その範囲内で働き続けられる業務もあり、このような仕事に従事している人は、「スキル不足を原因とした不調は起きにくい」としています。
これに対し、ITは進化が速くて、いくら勉強してもなかなか追いつくことができない分野です。さまざまな要因による競争激化、はては仕事のセンスの有無など、続けることのハードルが高くなる一方の職場といえるでしょう。
65歳以上になっても働くことが当然な社会になりつつある現在、テクノロジー業界に身を置く人たちは、ピーターの法則による無能化だけでなく、「心が折れやすい職種」で働いていることを認識し、自分なりの身の処し方を講じていく必要がありそうです。
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