「3枚の絵」が象徴するMS平野社長の経営哲学Microsoft Focus(2/2 ページ)

» 2017年02月11日 08時00分 公開
[大河原克行ITmedia]
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“3枚の絵”が象徴するMicrosoftの理念

 平野社長の社長室には、チームチャーターとは別に3つの絵が飾られている。「あまりにも殺風景だったので」と平野社長は笑うが、実はこの絵にも平野社長の強い思いが詰まっている。

 3枚の絵は、イラストレーターであり絵本作家のドクター・スース氏によるものだ。1991年に他界した同氏が、亡くなる直前まで約20年をかけてまとめた絵本『Oh, the Places You'll Go!』の中から2点、それとは別に同氏の作品から1点の絵を選んで、社長室に飾った。

Photo ドクター・スース氏の絵は社長の机の後ろに飾られている

 『Oh, the Places You'll Go!』は、スース氏が書き溜めてきた「自分にとって大切な言葉や、人生にとって大切なこと」をまとめた絵本だという。平野社長がこの絵本に初めて出会ったのは、幼稚園のときだ。

 「絵が可愛く色も元気で楽しいが、それだけではない。私の生き方、考え方のベースになっており、自分が持つ価値観とも合っている。この絵本を読むと勇気をもらえる」(平野氏)

 社長室に飾られた一番左の絵は「There's so so much to read!」。「学ぶことはいくらでもあり、『常に学ぶ』ことの大切さを教えてくれる」という。

Photo 「There's so so much to read!」

 真ん中の絵は、子供が大きな山を引っ張っている様子を描いた「Kid, You'll move Mountains!」というタイトルのもの。「子供でも山を動かせるということを表現した絵。『信じること、自信を持つこと、そして大きな夢を持つこと』の大切さを訴えたもの」だという。

Photo 「Kid, You'll move Mountains!」

 一番右の「They've proved they are persons, No matter how small!」というタイトルの絵は、3つの絵のなかで唯一、『Oh, the Places You'll Go!』には収録されていない作品。この絵には、小さな花の中に人が住んでいる世界があり、象以外の周りの者たちは「そんなことはない」と信じない様子が描かれている。象だけが「この中に人が住んでいるから絶対に守る」と言い、花を守り続けている様子を描いているのだ。

 「どんなに小さくても『人は大切にするべき』である、『人の大切さ』を示している」(平野氏)

Photo 「They've proved they are persons, No matter how small!」
Photo ドクター・スース氏の絵本『Oh, the Places You'll Go!』(画面=左)この絵本の中に2枚の絵が収録されている(画面=右)

 この3枚の絵を飾っているのは、「それぞれが、今の日本マイクロソフトにとって必要なことを示しており、共通する理念が込められている」ためだと平野社長は語る。

 1つ目の絵は、「世界がこれだけ大きく変化している中、『常に学ぶ』ということはとても大切。そして、積極的にフィードバックを得ることもまた大切」(平野氏)ということを象徴するという。

 また、「Microsoftは一時期、“化石”のようになったと言われたことがあったが、最近は“大きな山を動かすかのごとく面白くなってきた”と言われ始めた」と平野社長。テクノロジーだけでなく、“流れ”を変えられるような変化を起こせたのは、2つ目の絵が象徴する信念や思い、夢があってこそ――というわけだ。

 そして3つ目の絵は、日本マイクロソフトが『人』にフォーカスしてビジネスを行っていることとリンクするという。


 どこか優しい感じがする3枚の絵は、重厚なイメージの油絵などが一般的ともいわれる“社長室の絵”としては異例ともいえる。

 社員からは、「『あのマンガ、いいですね』といわれる」(平野氏)ようだが、この3枚の絵には、日本マイクロソフトの“さらなる変革”を象徴する深い意味が込められている。

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