社長室突撃企画第2弾。日本マイクロソフトの社長室に飾られた3枚の絵には、平野社長のどんな思いが込められているのか。
前回の記事では、日本マイクロソフトの平野拓也社長が社長室にスタンディングデスクを導入し、自ら働き方を改革している様子をリポートした。今回も引き続き、社長室からのリポートをお届けしよう。
ガラス張りの社長室に入ると目に飛び込んでくるのが、「JSLT CHARTER」と書かれた色紙だ。JSLTとはジャパンシニアリーダーシップチームの略称であり、平野社長をはじめとする日本マイクロソフトの経営チームのことを指す。この色紙は、日本マイクロソフトの経営チームが目指す方向性や価値観を共有するものであり、一部の社員からはジョークを交えて、「血判状」とも呼ばれているものだ。
ここには英文で、「We act as one and lead the organization to make japan shine in the digital era. We create a diverse workplace where everyone is energised,developing and having fun.(私たちは1つの組織として行動し、デジタル時代において日本を輝かせるようリードします。そして社員が活気づき、成長し、楽しむことができる多様性のある職場を目指します)」と書かれており、その言葉の上に経営陣一人一人が自筆でサインをしている。
これこそが、日本マイクロソフトが目指す方向性であり、リーダーシップチームが作り上げる企業の姿ということになる。
マイクロソフトは、「One Microsoft」の姿勢を打ち出しており、このチームチャーターのなかにも、「1つの組織として行動すること」が盛り込まれている。そして、このチームチャーターそのものが、リーダーシップチームがOne Microsoftとして、一体化した経営を推進していることを示すものだといっていいだろう。
この中に、「fun(楽しむ)」という言葉が盛り込まれている点も興味深い。これは、海外勤務が長いシニアリーダーシップ役員の1人から、「仕事にはファンが必要。だが、日本マイクロソフトには楽しむことが足りない」と指摘されて盛り込んだものだという。
平野社長は、「いままで以上に、決断力や実行力が求められている一方で、仕事を楽しむことも大切。シニアリーダーシップチーム自らも社員も、楽しむ気持ちを持って仕事に取り組む文化にしたい」と語る。
本連載で紹介した社内プロジェクト「PROJECT APOLLO」も、この「fun」という視点から企画したものだと平野社長は明かす。
米Microsoftでは、サティア・ナデラ氏がCEOに就任して以降、新たな文化の醸成がはじまっている。
ナデラCEOは、「地球上の全ての個人と全ての組織が、より多くのことを達成できるようにする」というミッションステートメントを打ち出し、企業の生産性を高め、個人の生活を豊かにすることをMicrosoftの新たな役割に据えた。また、「Growth Mindset(成長のための考え方)」という言葉で、同社が目指す新たな社内文化の姿も示している。
この考え方のベースになっているのは、著名な米心理学者であるキャロル・ドウェック氏の書籍だ。「偉大な業績に満足したり、固定観念に縛られたりすることで、成長を追うことや夢を追うことを止めてしまう個人や企業があり、それは、個人や企業が一瞬でも完璧であると思ったときに起こるものだ」という考え方を取り入れ、Microsoft自らがそうしたことに陥らないように、顧客にこだわることや、多様性を持つ企業(=One Microsoft)を実現することを目指すという。
同社では、「Growth Mindsetは、成長に向けてチャレンジすること、殻を作らないこと、イノベーションに向かっていくこと、仮に目標が達成できなくても次の成長に向けて努力をすること、自分たちの成長だけでなく顧客の成長も支援していくこと。そして、ミッションを成功させるためには、チームが守りに入ることがないといったことを文化として定着させるものになる」と位置付けている。
チームチャーターに、「社員が活気づき、成長し、楽しむことがきる、多様な職場を目指す」としたのも、マイクロソフトが目指すGrowth Mindsetによる新たな文化の定着を目指す姿勢を盛り込んだものだといえるだろう。
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