第9回〜第12回では、運用フェーズにおける失敗を取り上げました。SNSでの反響も多く、一番盛り上がったテーマだったと私自身は感じています。「データが集まれば自然にインサイトが出てくる」という“勘違い”がテーマでした。
数字の羅列の中に意味を見いだして解釈し、何らかの規則性を発見するのは、今のところは人間の役目です。10年15年先の未来では人工知能が活躍しているかもしれませんが、今のビジネス課題をそこまで先延ばしにすることはできないでしょう。
そもそも、データを集めて並べた程度でインサイトを発見できるなら、現場で働く誰かがとっくに発見しているはずです。集まったデータを眺めて、“飛躍しているかもしれないが可能性がある”無数の仮説を立案し、実際に立証のための施策を立案していく――それがデータ解析の現実ではないでしょうか。
必要なのは仮説を構築する力や俯瞰(ふかん)する力であり、統計学など二の次にすぎません。“DMPが完成すれば何とかなる”のではなく、DMPが完成してからが「本当の戦い」の始まりなのです。
連載の第1回で、私はDMPを定義するなら「インサイトとアクション、そしてそのために必要な全て」と述べました。課題発見と仮説構築の役割を「インサイト」が、そして発見した課題に対する仮説に基づく行動の役割を「アクション」が担っています。
大げさな表現だと思ったかもしれませんが、これは一般的なビジネスの現場で、誰もが行っているはずです。“データに基づく”という前提条件があるため、難しそうに見えるだけではないでしょうか。
昨今、私もビジネスデータを活用した因果推論に関する相談を受けるようになってきました。なぜかは分からないが、売れている現状を放っておけないマーケターたちが、例えば「TVCMの効果を可視化する実験」を始めています。そこでも、DMPは活躍しているのです。
「DMPって失敗している企業が多いらしいし、手を出すのが怖い」――。そんな感想を横目に、データに基づくマーケティング戦略と効果検証を始めている企業はどんどん増えています。その波に乗れるか乗れないかは、この連載を読んできた、あなた次第かもしれません。
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