IBM WatsonとSalesforce Einsteinの“AI連携”で何が起こるのかWeekly Memo(2/2 ページ)

» 2017年07月03日 11時00分 公開
[松岡功ITmedia]
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「マクロなWatsonとミクロなEinstein」で分析効果向上

Photo 2017年3月の提携時に発表資料上で公開したIBMのジニー・ロメッティCEO(右)とSalesforce.comのマーク・ベニオフCEO(左)のツーショット(出典:IBMの発表資料)

 今回の日本IBMの新たな取り組みは、実はIBMとSalesforce.comが2017年3月に発表した戦略的提携に伴う動きである。提携の最大の眼目はAI連携、すなわちIBMのコグニティブコンピューティング技術「Watson」とSalesforce.comのAIプラットフォーム「Einstein」をシームレスに連携し、企業がさらに高度な顧客エンゲージメントを実現できるようにするというものだ。

 そして、この提携の一環として、IBMが買収したBluewolfが、WatsonとEinsteinを組み合わせた機能を迅速に活用できるようにする手だてを講じることも掲げられていた。今回の日本IBMが新設したBluewolf専門チームは、まさにその手だてとなるものである。

 ただ、ここからは両社提携の最大の眼目であるAI連携そのものに注目したい。このAI連携、もう少し細かく説明しておくと、2017年後半までにWatsonの各種APIをSalesforceのアプリケーションに実装し、Watsonから得られる社内外のビッグデータの予測分析と、Einsteinから得られる顧客データの予測分析を組み合わせることによって、セールス、サービス、マーケティング、コマースなどにわたってより迅速な意思決定を行えるようにするという(図1)。

Photo 図1 「IBM Watson」と「Salesforce Einstein」の機能(日本IBMの発表資料)

 とはいえ、業種ごとのQ&AシステムのようなイメージのWatsonと、Salesforce製品に最適化されたEinsteinを組み合わせることで、果たして本当に相乗効果を生み出せるのか。今回の会見の出席者に聞いてみたところ、次のような答えが返ってきた。

 「大量の非構造化データを分析してそこから意味を引き出すWatsonと、CRMをベースとした分析できめ細かな顧客対応を可能にするEinsteinは、さまざまな用途で相乗効果を生み出せると確信している」(日本IBMの池田氏)

 「端的に言えば、Watsonはマクロな分析、Einsteinはミクロな分析に向いており、組み合わせれば効果は非常に大きい。製薬分野で例えると、Watsonは特定の血液型の人たちに対して特定の薬の影響を知ることができるのに対し、Einsteinは特定の薬がどの人に影響を与えるかを知ることができる」(Bluewolfのキャプラン氏)

 「どの企業にとっても顧客の動向を知ることは非常に重要で、Einsteinはまさしくそれを支援する。一方、Watsonは分野ごとに膨大で多様なデータを迅速に分析するところが強みなので、Watsonが分析した内容をEinsteinでさらにきめ細かく分析して、企業のビジネス価値を高めていくことができると確信している」(セールスフォース・ドットコムの手島氏)

 両社のAIを軸とした提携は、ITベンダー同士の新たな協業形態とも見て取れるだけに、その相乗効果がどれほどのものか、注目しておきたい。

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