GPUに関しては、エヌビディア マーケティング本部 エンタープライズマーケティングマネージャーの佐々木邦暢氏が解説した。例えばNVシリーズはTesla M60、NCシリーズは「Tesla K80」を搭載し、今後利用可能になるであろうNCv2シリーズはTesla P100、NDシリーズはTesla P40を採用している。NVIDIA製GPUは世代ごとに特性を持ち、現行のPascal世代もHPC(高性能計算)や深層学習に強く、描画機能はそれほどでもないという。
「Pascal世代の中でも、P100はHPC、P40は深層学習に特化している。NVシリーズが採用するTesla M60は倍精度浮動小数点演算に苦手なため、HPCではなくGRID(GPU仮想化)向けだが深層学習にも使える。Tesla K80は倍精度演算に強いHPC向けとなる。目的に合わせて選ぶ」(佐々木氏)のが、仮想マシン選択時のポイントだと述べつつ、深層学習トレーニングシステムである「NVIDIA DIGITS」を紹介した。
NVシリーズを利用したソリューションとして、シトリックス・システムズ・ジャパンの竹内裕治氏が「XenApp Essentials」「XenDesktop Essentials」などを取り上げた。
MicrosoftとCitrixは長年の協業関係にあり、2016年5月からは戦略的提携関係の拡大と強化を発表済みだが、「Azure RemoteApp」の後継機能であるXenApp Essentialsについては、「アプリケーションを仮想化し、ナレッジワーカーなど効率性を重視した使い方にフィットする。VDI的に利用するXenDesktop Essentialsは、Windows 10を想定し、フォーカスした業務アプリケーションに利用する」(竹内氏)と、それぞれの特徴を紹介した。
特にWindows 10 VDI on Azureを実現するサービスとなるXenDesktop Essentialsは、今後多くの注目を集めるはずだ。
大塚商会では、NVシリーズの具体的な展開として、BIM(ビルディング インフォメーション モデリング)に特化したソリューションを紹介した。大塚商会 PLMソリューション営業部 プロジェクトPLM課 長井尚史氏は、「建物を全てデータ化し、必要に応じて情報を切り出すBIMは、ゼネコンや設計事務所、政府などが推進し、施工分野ではフルBIMを実現する企業も増加している。だが、代表的なBIMツールはハイスペックPCが必要になるため、NVシリーズのような『仮想ワークステーション』環境は魅力的」だという。
さらに会場では、NV6上で「Autodesk Revit」を実行するデモンストレーションを披露。GPU未サポートの仮想マシンと実行結果を見比べると、シェーディング処理が一瞬で完了し、その違いを見せつけた。
「高機能ワークステーションの機能を『使いたいときに使いたいだけ使い、使った分だけ費用発生』するのは大きなメリット」(長井氏)
BIMツールの利用には、仮想マシン上での実行が許諾範囲に含まれるかなど、幾つかの課題が残るものが、特に大きな問題の1つに、シャットダウンミスによる課金発生が多いという。そこで大塚商会では、利用者向けに「Azureランチャー」、管理者向けに「Azure管理コンソール」を含む「NVシリーズワンストップサポートサービス(仮称)」の提供を予定する。
今回のローンチイベントに参加して強く感じたのは、「特別な理由がなければ、ローカルPCをワークステーションレベルまで強化するメリットは薄れてきたのではないか」という点だ。
仮想マシンは従量課金制のため、継続的な利用を踏まえると購入した方が安い場合もあるだろう。だが、プロジェクトごとに用途が異なり、「前回のプロジェクトは演算処理、今回のプロジェクトはGPU機能」と、目的が変わるようであれば、GPUをサポートする仮想マシンの存在感はますます高まっていくといえるだろう。
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