コレ1枚で分かる「“人に寄り添うIT”を目指す音声認識」即席!3分で分かるITトレンド

次世代のUI(ユーザーインタフェース)と期待される音声認識技術がいかにして登場したのでしょうか? PCを操作するために生まれたキーボードと人との関係から振り返ってみましょう。

» 2017年10月16日 07時00分 公開

この連載は

 カップめんを待つ間に、電車の待ち時間に、歯磨きしている間に“いまさら聞けない”ITトレンドが分かっちゃう! いまさら聞けないITの最新トレンドやビジネス戦略を、体系的に整理して分かりやすく解説する連載です。「この用語、案外、分かっているようで分かっていないかも」「IT用語を現場の社員にもっと分かりやすく説明できるようになりたい」――。情シスの皆さんのこんな課題を解決します。


 私たちがはじめての道具を使おうとするとき、どのように操作すればいいのかを強く意識します。そして、マニュアルと突き合わせながら、一つひとつの操作について意識し、操作の手順を確認し、記憶に定着させようとします。ときには、やり方が分からなかったり失敗したりして、試行錯誤を繰り返しながら正しい操作を記憶に定着させていくはずです。そんな操作を繰り返していくうちに、マニュアルも必要なくなり、操作することを意識しなくても操作できるようになります。

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 例えば、PCであれば、キーボードというインタフェースで操作します。最初は人差し指で一つひとつキーをたたいていても、何度も使っているうちに、5本の指でタッチタイピングできるまでに習熟していきます。

 人はこのようにして、当初意識しなければならなかった操作を、学習を重ねることで無意識にできるようになります。

 ところが、そもそもキーボードをはじめて使う人にとっては、これまでの生活には存在しなかったものなので、その存在自体が大きな心理的抵抗になります。その抵抗を少しでも減らそうと登場したのが「タッチ操作」というインタフェースです。

 タッチ操作の登場により、操作が直感的になり、心理的抵抗は軽減されました。最初は操作方法を意識することはあっても、直感的な操作は習熟を容易にし、短期間のうちに操作方法を意識しなくても使えるようになります。

 ただ、使うアプリケーションごとに操作方法は異なるので、どうしてもはじめて使うときには意識しなくてはなりません。そのハードルが、お年寄りや一部の人たちの利用を阻むことになります。

“人に寄り添うIT”への進化

 道具やアプリケーションの存在を意識することなく、操作方法も意識しないくていい――そんな機械とのインタフェースとして期待されているのが「音声操作」です。

 普段使っている自然な言葉で語りかけるだけで、操作することができます。個々の機械やアプリケーションについての操作方法を知らなくてもよいのです。その上、曖昧な表現で話しかけても、操作される側の機械やアプリケーションがその意図を解釈してくれ、解釈できなかったら質問を返して確認してくれることで、操作できるようになります。

 例えば、お年寄りがコタツの上に座っているクマのぬいぐるみに、「NHKがみたいんだけど、テレビをつけてよ」と語りかけるだけで、テレビをつけることができるわけです。

 残念ながら、現時点では、まだ完全に自然な言葉で機械を操作できる段階ではありません。はっきりと喋る、定型的な表現を使うなど、意識しなければならないことがあります。しかし、近い将来、そんなことも気にしなくてよくなるでしょう。そうなれば、利用者の裾野やアプリケーションの適用領域が広がっていくと期待されています。

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 キーボードやタッチ操作は、使いこなすために人がITに寄り添っていかなくてはなりません。しかし、音声操作になれば、人が努力してITに寄り添う必要はなくなります。

 そんな流れが確実に生まれてきています。さらに、考えるだけで操作できるインタフェース「BMI(Braine Machine Interface)」も登場しようとしています。このようにITは、“人に寄り添う”方向へと向かいつつあるのです。

 いま米国では、機器やサービスを音声で操作できる「Amazon Echo」が爆発的に売れています。2014年11月の発売以来、着実にその販売台数を増やし、2016年末までに累計1100万台を売り上げているそうです。Amazon Echoには、音声認識、と機器やサービスの操作を行う「Alexa」と呼ばれるAIソフトウェアが搭載されています。Alexaに呼びかけるだけで、さまざまな操作が可能になるのです。

 現在、Alexaに対応したサービスや機器は1万5千を超えています。現時点では独壇場ともいえる快進撃ですが、これに対抗しようと、GoogleやApple、Microsoft、LINEなども製品を出し始めています。

 音声認識は、まだ、登場して間もない領域ですが、AIの技術の発展とともに、今後この市場は大きく拡大していくものと期待されています。

Photo 【図解】コレ1枚で分かる「“人に寄り添うIT”を目指す音声認識」

著者プロフィール:斎藤昌義

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 日本IBMで営業として大手電気・電子製造業の顧客を担当。1995年に日本IBMを退職し、次代のITビジネス開発と人材育成を支援するネットコマースを設立。代表取締役に就任し、現在に至る。詳しいプロフィールはこちら。最新テクノロジーやビジネスの動向をまとめたプレゼンテーションデータをロイヤルティーフリーで提供する「ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー/LiBRA」はこちら


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