「会計マスターの分散」が引き起こす、与信判断の重大なミス今こそ見直す「データガバナンス」(4)(2/2 ページ)

» 2017年11月29日 08時00分 公開
[堀雄介ITmedia]
前のページへ 1|2       

グループ、そしてグローバルの取引を可視化する

 会計の世界では、上場企業の連結会計が定着して久しい日本ですが、与信管理においては、親会社の信用を考慮してはいるものの、企業単体で評価を行う文化が、いまだに根強く残っています。

 もちろん、親会社が子会社の債務を保証してくれているとは限らないため、単体企業の審査に意味がないわけではありません。しかし、企業グループは互いに財政的な結び付きが強く、子会社1つの経営破綻がグループの衰退を招くケースも少なくないため、グローバルのレイヤーで、自社グループ対取引先グループの取引状況を把握することには大きな価値があると考えられています。

 多国籍にビジネスを展開するIT企業のF社は、顧客コードを企業コードで束ねるばかりではなく、そこにグループ関係を明らかにする「親コード」を振っています。自社グループ対取引先グループとの取引を可視化でき、重要な取引先グループに対する与信判断や取引限度額の検討を行っているとのことです。

 また、取引先グループ内における未取引先を、外部調査機関からリストアップすることで、グループ内の紹介営業や包括契約の提案など、営業活動にもグローバルマスターを活用しています。

photo グループ、そしてグローバルマスターを統合する意義

情報システム部門における、マスターデータ管理の必要性

 これまで本連載では、企業経営にとって重要だと認識されながらも見過ごされがちな「マスターデータ管理」をテーマとして、各回で「サプライヤー管理」「コンプライアンスチェック」「与信管理」など、それぞれの業務における実例をもとに、その影響や効果を紹介してきました。

 もちろん、これらは事業部門を支援する情報システム部門にとっても他人ごとではないと思いますが、情報システム部門が先導してリリース、保守するシステムのパフォーマンスもまた、マスターデータの“完成度”によって成否が問われることを忘れてはいけません。

photo さまざまな業務に影響する取引先マスターは、業務インフラの中核と言っても過言ではありません

 最後に、東京商工リサーチのお客さまであり、CRM導入プロジェクトを取引先マスターの整備と共に成功に導いた、情報システム部長の言葉をご紹介します。読者の皆さんがマスターデータ管理に取り組んでやり遂げ、ひいてはビジネスを成功に導くことを願ってやみません。

 システム導入の検討は、ツールに意識が集中しがちですが、そこに入力、蓄積されていくデータはより重要でしょう。例えるなら、料理というプロジェクトにおいては、機能的な調理器具(ツール)のみならず、当然、鮮度と品質の高い食材(データ)が求められるということです

著者プロフィール:堀雄介

photo

東京商工リサーチ ソリューション開発部 コンサルタント


企業情報データベースや関連アプリケーションを専門としたプリセールス活動に従事。グローバルレベルの与信管理やサプライヤー管理をテーマとした講演も行う。企業情報を構築する調査現場での経験を経て、2012年より現職。

趣味は山登り(奥多摩、丹沢の低山を中心に)、サイクリング(ロードバイク初心者)、スノーボードなど。運動不足解消のためでもあるが、運動後の1杯もまたやめられない。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ