お酒の新境地でヒット連発、なぜシャープが? Makuakeとのコラボが成功し続ける理由山岡週報(2/3 ページ)

» 2018年01月12日 07時00分 公開
[山岡大介ITmedia]

企画を実現する「人のつながり」

 その後、まさか年内に2つも新しいプロジェクトが実施されるとは思っていませんでした。そもそもこうしたクラウドファンディングのプロジェクト自体が、シャープとしては挑戦的な取り組みでした。

シャープ西橋さん: 「研究開発という部署では、多くの新しい技術が生まれているのですが、なかなか日の目を見ないものも多いんです。でも、私たちはそれらを常に『世に出したい』と思っている。そこに何らかの価値を付けて製品化をする手段を模索する中で、クラウドファンディングというやり方があると知りました。そこでMakuakeに相談しに行ったのが最初のきっかけです。そのとき印象に残っているのは、Makuakeの方々から「僕らは面白くないと思ったものは面白くないと言います」と断言していたこと。そんな彼らが、この技術は面白い!と言ってくれたことに背中を押されました」

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 「新規事業を始める」となると、採算や事業計画が大掛かりなものになってしまいますが、その手前の段階で「世に問う」クラウドファンディングであれば実現の可能性がある――という思いから、社内で稟議を通すために関係者一人一人の考え方を変えていく活動を続け、なんとかスタートすることができたということでした。

西橋さん: 「大手メーカーで新規事業を進める際に、いろいろな人からの意見や壁が立ちはだかると、だんだん『疲れてしまう』のが弊害なのかもしれませんね。私もこのプロジェクトで立ち止まってしまいそうなときがあったのですが、そういうときにMakuakeの北原さんをはじめとするチームのみんなで励ましあうことで乗り越えることができました。また、進めていく中で、社内でもどんどん仲間が増えていったんです」

 2016年8月ごろに西橋さんからMakuakeに相談があった後、10月頃に「日本酒の保冷バッグ」の企画に決定。それに合わせた日本酒を作れないかということで、Makuakeとつながりがあった石井酒造への相談を開始し、2017年3月のプロジェクト開始と同時に、シャープの社内ベンチャーとして「TEKION LAB」が立ち上がりました。

 こうして、まず「冬単衣」プロジェクトがスタート。これが大きな反響を呼び、シャープにもMakuakeにも新たな話が舞い込むようになったそうです。

プロジェクトを継続する「エネルギー」と「仕組み」

 2017年8月に、シャープ社内でTEKION LABの第2弾をやろうということが決定。以前から相談のあったカネジュウ農園さんをMakuakeが紹介し、翌月末から「茶響」プロジェクトを開始。もともと相談があったとはいえ、このスピード感はどこからくるのでしょうか。

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マクアケ木内さん: 「ネタのストックがあったとか、いろいろな要因はあると思いますが、一番の要因か何かというと、西橋さんをはじめとしたシャープの皆さんとうちの北原を含むMakuakeチームの『やる気』『エネルギー』だと思うんです。そこがほかとの大きな違いとなっていて。最初のプロジェクトはとても“難産”でしたが、それが成功し、チームとしての団結力ができたことで、第2弾、第3弾は比較的スムーズに立ち上がったのかなと思います。結局は“人”なんですよね」

マクアケ北原さん: 「そもそも私は、こうしたモノづくりに関わる仕事がしたくてMakuakeに入ったんです。このプロジェクトはそんな僕にとって、そんな思いを加速させるプロジェクトとなりました。このプロジェクトに関わるようになってさらに力が湧いてきたというか」

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北原さん: 「父が町工場をやっていることもあって、日本のモノづくりは常に身近に感じていました。だからこそ、日本の研究開発費への問題意識がありました。毎年、膨大な費用がかけられているのに、うまく製品化できていないものがいっぱいある現状をなんとかしたいと思っていました。そうしたなかでシャープさんとの出会いがあって、これはなんとしても成功させたいなと」

 また、スピード感の裏側には、Makuakeならではのクラウドファンディングの知見の蓄積がある。

北原さん: 「この一連のプロジェクトは、TEKION LABの価値を市場に問うというテストマーケティングとしての位置付けもあります。仮説検証のPDCAサイクルを回して、メッセージの伝え方を“プロジェクトの途中でも”変えることができる。いま実施中の煎茶GINのプロジェクトも、スタート時の購買者の傾向を見ながらコピーやデザインを変えたりしている。そうした小回りが利くのもクラウドファンディングの良いところだと思っています」

西橋さん: 「従来の製品販売では、方向性を定めたらそこで広告宣伝なども固まってしまい、修正ができない。それに比べると、顧客の反応を見ながら変化していけるのは非常に面白いですよね。「TEKIONという価値をどうやって伝えていくか」、ということをMakuakeさんと常に考えています」

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