RPAはExcel VBAで制御しにくいオフラインソフトの操作や、ブラウザがFirefoxである場合などの制御に適し、プログラミングができない人でも作れる可能性がある一方、Excel VBAはプログラミングこそ必要となるが、柔軟な処理が得意で、複雑な条件分岐もできる。ただし自動起動ができない、ブラウザがIEという制限がある。
2017年10月に商品部門からICT戦略チームに異動した岡さんは、プログラミングの経験がないにもかかわらず、既にRPAによるロボットを開発しているという。「現在は業務の合間を縫って、UiPathでロボットを開発しています。動画で勉強し、アクセンチュアさんに教えてもらいながら作っていますが、複雑ではない操作ならば、意外と簡単に作れます」(岡さん)
ライセンスフィーの面ではワンクリックツールが有利だ。RPAを全社員に配布するとなるとコストは膨れ上がるが、Excelなら追加の料金はいらない。RPAは定型的な作業、VBAは複雑な条件分岐を行うというように使い分けることで、RPAがExcelを起動し、自動実行すればマクロが細かい動きをしてくれるというような、より柔軟な業務の自動化が可能になるのだ。
冒頭で述べたように、RPAの将来像として、クラウド連携でAI技術を用いて、より複雑な処理をさせたいというニーズはあるだろう。しかし、まずは人間の作業を代替するソフトウェアロボットを人間や企業が受け入れること、そしてそういった体制を作り上げることが大切だ。
その意味で、三井住友海上は既に社内に「人間がボタンを押すことで、Webシステムを自動操作をしてくれるマクロ」を利用する文化があり、それをベースにRPAを併用するというのは、スムーズな導入を促す、理想的な1つの形といえるだろう。
AIやRPAのような、トレンドが絡んだIT施策はトップによって決定されることも多いが、現場レベルで起こる業務の効率化へのニーズは、シンプルなモチベーションから起こる。しかし、そのムーブメントが会社全体を動かし得る――三井住友海上の事例は、RPA導入の可能性を感じさせてくれる。(後編へ続く)
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