HoloLensは、世界的に見ても、日本のコミュニティーが一番盛り上がっているという。その日本における1年間の取り組みを、日本マイクロソフト Windows&デバイスビジネス本部の三上智子本部長が振り返った。
HoloLensが、日本に初上陸したのは、2016年11月。「Microsoft Tech Summit」で、日本マイクロソフトの平野社長が紹介したのが最初だった。
「このとき、日本独自にHoloLensをアナウンスしたいと本社と交渉したが、これが大変であった。しかし、HoloLensの実機を展示して、発売予告をすることができた」というエピソードを紹介しながら、「これによって、アングラで活躍していたHoloLensのコミュニティーの皆さんが、正々堂々とHoloLensを活用できるようになった」と笑いを誘った。
日本では、2016年12月2日から、「Microsoft Store」で事前予約を正式に開始したが、北米では、2016年3月30日(現地時間)から販売を開始しており、この間、米国の知人などを介してHoloLensを入手していた「隠れホロスタン」たちは、水面下で情報交換活動などを行っていたという。正式発売の告知以降、こうした隠れホロスタンたちが、HoloLensを正々堂々と持ち歩けるようになったわけだ。
2017年1月18日から日本で出荷を開始したところ、予約開始から24時間および1週間の予約件数は、欧州6カ国の合計数の3倍という日本の盛り上がりとなり、米国本社に衝撃を与えたという。
「最初に行われた開発者コミュニティーの集まりでは、80台のHoloLensをシェアリングし、米国本社を驚かせた」と三上本部長は振り返る。
こうした日本のHoloLens開発者コミュニティーの熱気の高さに感動したのは、HoloLens生みの親であるアレックス・キップマン氏だ。2017年5月23日に、日本で開催された技術者向けイベント「de:code」(デコード)の基調講演のために日本を訪れた。三上本部長は、「グローバルイベント以外は来日したことがなかったアレックスを連れて来ることができたのは、私のMicrosoft人生のなかでも大事な思い出」と表現。「ホロレンジャーの熱気を見て、アレックスは、日本を大好きになって帰ってくれた」と報告した。
その後も、コミュニティー活動は活発化。東京だけでなく、大阪や名古屋でも開催し、新たな開発者が次々と参加し、活動がさらに広まっていったという。
一方で、法人での活用例も広がりをみせている。
先行したのは、JALでの活用事例だ。同社では、パイロットを対象に開発した「ボーイング737−800型機 運航乗務員訓練生用トレーニングツール」と、整備士を対象にした「ボーイング787型用エンジン整備士訓練用ツール」を開発。Microsoftが2016年7月に、カナダ・トロントで開催したパートナー向けイベント「ワールドワイドパートナーカンファレンス」で、全世界に向けて公開。「日本人として誇らしい先行事例」(三上本部長)となった。
続いて、小柳建設が、HoloLensを使って、建設会社の業務を改革する「Holostruction」プロジェクトを開始。「建設現場を元気にし、格好良くするという志の下、現在もさまざまな取り組みが進められている」と紹介した。
2017年11月に日本で行われた「Microsoft Tech Summit」では、三上本部長が、小柳建設の事例を基にシェアリングやリモートによるアバターの操作をデモストレーションした。「前日の夜中までは、1回も成功していなかった。通訳レシーバーをはじめ、会場を赤外線が飛び交っていたのが原因。翌朝、気を取り直して、『エアデモ』を何度も繰り返し、本番ではばっちり決まった。ステージで多くの人にHoloLensの魅力を伝えることができた」と振り返った。
事例は徐々に増えており、三菱ふそうトラック・バスが、HoloLensを活用した開発やメンテナンス利用に取り組んでいるほか、杉本真樹医師による手術現場でのHoloLens活用、ナムコが運営するテーマーパーク「ナンジャタウン」でのHoloLensを使ったパックマンのアトラクション、HADOのカートアトラクションでの利用などが紹介された。
さらに、ネットによる通信制高校のN高等学校の入学式では、東京会場に参加した新入生たちがHoloLensを装着して、沖縄であいさつする校長の祝辞をMR環境で視聴。「当時はクレジットカードでしか購入できなかったため、70台を5回に分けて、クレジットカードで購入してもらった」という裏話も披露した。
年末商戦では、「Windows Mixed Reality」のプラットフォームとして、OEM各社からVR体験ができるデバイスが登場し、「これらの製品も非常に好評である。これもMRの世界を広げることになる」と語り、「盛りだくさんの楽しい1年であった」と総括した。
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