「コストセンターだったころの情シス部門は、黙っていれば仕事が来ていました。しかし、それが悪循環を生む原因になっていたのです。“運用で手がいっぱい、だから新しいことをやれないのは仕方がない”という思考停止のスタンスで、ユーザー部門からの期待はゼロどころかそれ以下のマイナスになっていました」(高橋氏)
そんな情報システム部門も、事件を契機に大きくマインドが変わり、「いつ、何が起こるか分からない時代に、企業が持続的に成長するために何ができるか」を真剣に考えるようになったという。
そのためにも、これからは今まで手がつけられなかった“攻めの施策”に着手する考えだ。
「自転車でいえば、後輪がモード1(守りのIT)で前輪がモード2(攻めのIT)。両方の取り組みをバランス良く行うのが大事だと思っています。昔は96%のリソースで運用維持管理を手掛け、残りの4%でしか新しいことができていなかったので、2年前からリソース配分を変えていくために、データ連係基盤や自動化基盤を入れて効率化を図ってきました」(高橋氏)
効率化によって生まれた時間はこれまで、情シスへの信頼を回復するための施策に使ってきたが、これからは、社員があっと驚くような“攻めの施策”に取り組んでいきたいと話す。
「ビジネスを加速させるためのツールは、時代によって変化します。“今が旬”のツールは、いいと思ったらすぐに導入するような姿勢で対応しなければなりません。こうした理念をソフトウェアベンダーや業務現場と共有しつつ、知見を共有しながら成長していくことを目指しています」(高橋氏)
一方で高橋氏は、これまで“守ってきた情シス”が“攻め”に転じるのが難しいことも理解しており、そのためのケアも忘れない。
「情報システム部門の人は、これまでやってきた得意分野の運用管理なら“できる”という自己効力感があるので安心できますが、それを『やるな』といわれたら不安になります。そんな不安を拭い去るには、“やったらできる”ということをリーダーが示してあげる必要があります」(高橋氏)
困っているメンバーがいたら耳を傾け、何かを相談されたら「どうしてできないの?」と責めるのではなく、「こうやったらできるかもしれないね」「どうすればできると思う?」というように、相手の中にある答えを引き出す問いかけをする――。このように、リーダーが常に“伴走”することで不安はなくせるというのが高橋氏の考えだ。
「問題が起こっても失敗しても、“いつもリーダーが見守ってくれている”と思えば、人は安心して新しいことにチャレンジできます。それが上司の仕事であり、それができないと“チャレンジする組織”には変わることができないと思うのです」(高橋氏)
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