「一度開発して10年塩漬け」は過去の話に アジャイルを加速させる「超高速開発」本当はうさんくさくない、超高速開発のリアル(4/4 ページ)

» 2018年04月10日 12時00分 公開
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超高速開発の課題

 ここまでは、超高速開発の良い面ばかりを強調してきました。

 ところで、第1回第2回で触れられているように、2018年時点の超高速開発を実現するためのツールの「リアル」は、まだ発展途上段階です。得意とする定型パターンにはまれば圧倒的な生産性と保守性を実現できる反面、非定型パターンの対応は難しいところがあります。

 とはいえ、日本で超高速開発というキーワードが登場してまだ間もない中で、急速に多くのツールが発表されているのは、やはり注目に値します。

 SIerは、これまで人件費の安い海外拠点への開拓に投資してきました。それが今は、われ先にとツールの開発と利用のノウハウ習得に投資を振り向けているようです。投資金額の増大は、競争を生み、市場が活性化して製品が洗練されていきます。ツール開発ベンダーは大変でしょうが、ユーザーや社会にとって、これは喜ばしいことです。

 さまざまな制約があってもなお、新規開発案件はまず「超高速開発の利用を検討する」というのがこれからのトレンドになると考えています。デメリットよりもメリットが上回る分岐点は、もう目の前です。

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 いよいよ超高速開発が浸透し、それが当たり前となった近未来でも、組織を支えるためのエンタープライズシステムはもちろん存在しています。ただ、いまと違うのは、大規模システムを少人数で保守する体制が出来上がり、さらに「DevOps」が当然となって、常に社会のニーズに合わせて進化できるようになっていることです。

 そのころには、「一度開発して10年塩漬け」というのは、完全に過去の話になっているはずです。いまでいう「SoE」と「SoR」というバイモーダルな切り分けのボーダーは消失しており、エンタープライズシステムもアジャイルな体制で運営されているはずです。正確に言えば、次代の経営方針そのものがアジャイルな文化を前提に策定されることが常識であり、それを支えるエンタープライズシステムもアジャイル性を獲得しているのではないかということです。

 その体制を支えるのは「自動化」であり、その自動化に先鞭(せんべん)をつけたのが、超高速開発です。数年先にふと思い出して、そういえばこのようなことを書いてあった記事をどこかで読んだなぁと懐古していただければ幸いです。

著者プロフィール:贄良則(にえ よしのり)

ジャスミンソフト代表取締役。

沖縄県の第三セクターであるトロピカルテクノセンターから分社し、ジャスミンソフトを設立。超高速開発ツール「Wagby」の開発に注力する。超高速開発コミュニティー設立メンバーで現幹事。


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