不正アクセスを受けた大阪大学が模索する、新しい「CSIRT」の在り方(後編)(4/4 ページ)

» 2018年07月19日 08時00分 公開
[高橋睦美ITmedia]
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 「今までの情報システムはモダニズム的で、制服というシステムがあれば、ユーザーがそれに合わせる形でした。でもこれだと、まるでシステムがメインで、人間はツール……もっと言えば“奴隷”のような感じですよね。

 デジタルトランスフォーメーションの一番のポイントは、いろいろな処理をデジタル化することで、1人当たりの処理コストが少なくなり、その分、個人個人に合わせた対応ができるところにあると思います。個人を見て、それに合わせてシステムが柔軟に振る舞いを変えていくわけです」(柏崎氏)

 例えば、これまで衣服は体のサイズに合わせて選ぶのが当たり前だったが、ZOZOSUITのように「私の体のサイズに合わせた服を作ってほしい」という取り組みも生まれている。柏崎氏は「これと同じことを情報システム部もやらなければいけないと思います。今の情報システム部は『皆、これに合わせろ』というだけで、利用者を支援していないじゃないですか」と、自戒を込めつつ述べた。

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 特に大学教員は、研究という“競技”において、それぞれの種目で記録を目指す「アスリート」のような存在であるだけに、そうした姿勢が重要だという。皆が世界に通用する研究成果を出すべくまい進している中、「危ないから、この重たい鎖帷子を着て走ってください」と言っても、素直に従う人は少数派だ。それを受け入れた上でケアしていくのが、情報システム部のやるべきことではないか――そう、柏崎氏は考える。

 「『自分たちの情報リテラシーは高い。だから、皆そうすべきだ』というロジックは危うい。そもそも多様性があるからこそ、大学という不思議な存在が、組織たり得るわけです。セキュリティに全く関心を持たない人間でも、安全に研究活動ができるようにすることが、支援する側としての誇りだと僕は思います」

 「これに合わせなさい」という形ではなく、こちらから寄り添い、合わせていく形のシステムやCSIRTの在り方を模索し続ける。大阪大学が目指す姿は、これもまたセキュリティの“デジタル変革”なのだろう。

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