インタビュー
» 2018年10月01日 08時00分 公開

借金10億円、倒産まであと半年――創業100年の老舗旅館「陣屋」をたった3年でV字回復させた方法【特集】Transborder 〜デジタル変革の旗手たち〜(4/5 ページ)

[池田憲弘ITmedia]

田舎の一旅館が、2009年に「クラウド」を選択できた理由

 システムの要件として考えたのは、セキュリティやカスタマイズ性はもちろんのこと、資金ショートまで半年という状況下では、コスト面はシビアにならざるを得ない。そこで宮崎さんが考えたのは「使った分だけ支払う」という料金体系だ。

 「もともとリース会社で働いていたので、システムの入れ替え時に面倒なことになる様子を見てきたんです。4〜5年で減価償却が終わるころには、テクノロジーが大きく進歩していてOSも変わっている。そのままシステムを載せ換えることもできず、移行の作業費がムダに膨れてしまうのです。システム会社はもうかりますが、自分の会社という立場で考えれば当然イヤですよね(笑)」(宮崎さん)

 旅館業であるため、ITリテラシーが高い人間が多いわけでもなく、サーバのお守りはしたくない……そう頭を悩ませていた宮崎さんに、夫の富夫さんが「クラウドでいけるじゃん」と声を掛けた。当時はまだメジャーではなかった技術だったが、海外の学会を聞きに行くなど、勉強熱心だった富夫さんはクラウドの可能性に気付いていたという。

photo 陣屋が考えていた基幹システムの要件

 当初は、自分たちの選定要件を満たしたサービス(ホテルシステム)を探していたが、旅館に求められるシステムはホテルともやや異なる。カスタマイズを繰り返すとコストが膨らむ上、時間もかかると判断し、自分たちで開発することを決めた。ちょうどその頃、たまたまフロント係に応募してきた人が、元SEという異色の経歴を持っていたことからすぐに採用し、システムの開発を依頼したそうだ。

 「気分を変えて、別の仕事をするつもりで応募してきたという話だったのですが、システム開発の相談をしたところ、『それなら、もう一度エンジニアでやりたい』となりました。しかし、当時の陣屋は、正規エンジニアの給与で雇用するのが非常に難しい状況だったので、フロント係として採用し、夜勤の時間で開発をしてもらえないか、とお願いしました。むちゃな話だったと思うのですが、快諾してもらえました。給与に関しては、いわゆる“出世払い”という形です」(宮崎さん)

 こうしてエンジニアも確保し、彼の提案でシステム構築にSalesforceを使うことも決まった。正月休暇に入っていた同社に連絡がついたのが、2010年の1月10日。2ライセンスを発行してもらい、その夜から早速システムを作り始めた。宮崎さんが陣屋の女将になってから、3カ月後のことである。

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