「除雪車監視システム」「送電線の点検AI」――IoTは、地方の困りごとをどう解決してきたのか「IoTビジネス共創ラボ」3年の軌跡(2/2 ページ)

» 2019年01月24日 11時00分 公開
[高木理紗ITmedia]
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地方で事例、続々

 実際にIoTビジネス共創ラボが関わった事例はさまざまだ。例えば、東京電力パワーグリッドでは、山間部など、人が行きにくい場所にある送電線の点検が課題となっていた。そこで、同団体に参加するテクノスデータサイエンス・エンジニアリング(TDSE)が新システムを開発。ヘリコプターで飛行しながら撮影した送電線の映像をクラウド上にアップロードすると、システムが、異常のある場所や補修が必要な場所をディープラーニング技術で自動的に判定し、報告書を作成して東京電力パワーグリッドに送信できるようにした。同システムは、2019年4月の本格稼働を予定している。

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 また、毎年大雪に悩まされる石川県加賀市では、除雪車の運行管理をIoT化した。これを可能にしたのが、地元企業である北菱電興(ほくりょうでんこう)が開発した「スノプロアイ」だ。現場の作業員がスマホを除雪車のフロントガラスに取り付け、専用のアプリを立ち上げると、GPSが除雪車の位置と稼働状況、除雪中にスマホから撮影した画像などをクラウドに送信。市や業者はリアルタイムで除雪状況を把握できる。これまでは手作業で送っていた除雪業者から市への日報や請求書も、自動的に作成、送信してデータを蓄積するなど、作業を効率化したという。

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 スノプロアイの通信にはNTTドコモの専用通信回線を使うなど、確実な通信環境にもこだわった。加賀市では、過去に大雪が降った際、インターネット回線へ接続しにくくなる状況も発生したためだ。

 北菱電興の長谷侑哉氏は「コストとしては高くなりますが、自治体の場合は24時間使える除雪システムが必要なので、通信環境を重視しています。今後はさまざまな自治体への展開を想定しますが、一つの市が1000台規模の除雪車を動かしているケースもあるので、クラウドでシステムを運用することで、スケーラビリティが確保できたと考えています」と語った。

ニーズに応じて、“IoTプラスα”を運用する時代へ

 IoTビジネス共創ラボでは、今後も各地で活動を続け、他のIoT関連団体との交流も図っていくという。会員数は順調に伸びているものの、「2018年に想定していた『一般会員1000社』の目標には届いていないので、活動をさらに強める必要があると考えている」と、福田氏は話す。

 「今は、『AI』『IoT』といった切り口で事例の一部を紹介していますが、今後は企業の細かいニーズに応じて、“IoTプラスα”と呼べるような複合的な事例を作っていきたいですね。これからは、例えばMR(複合現実)デバイスのHoloLensとIoT、オープンデータと組み合わせた予測システムなど、必要なサービスとの業務連携といった広がりを持たせた運用ができるのではと考えています」(福田氏)

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