今なお続く福島の「除染」 “ドローン×AI”で除去物管理の自動化に挑む企業(1/2 ページ)

東日本大震災から8年が過ぎようとしているが、原子力発電所の事故で生まれた放射性物質の「除染」は今なお続いている。除染で生まれた膨大な土壌の管理は、非常に労力のかかる作業だが、それをドローンとディープラーニングで効率化した企業がある。

» 2019年01月30日 08時00分 公開
[池田憲弘ITmedia]

 東日本大震災から8年が過ぎようとしているが、いまだに約5万4000人が避難生活を余儀なくされているなど(復興庁調べ、2018年11月12日現在)、復興はまだ道半ばと言わざるを得ない状況だ。特に、原子力発電所の事故で生まれた放射性物質の「除染」は今なお続いている。

 福島県の場合、汚染された土や草木などを取り除く「面的除染」は2018年3月に終了したが、取り除かれた土壌の多くは、保管容器(フレキシブルコンテナ)に入れられ、除染現場や市町村が用意した「仮置き場」に保管されている。現在はここから順次、県内に建設されている「中間貯蔵施設」へと搬出されている段階で、最終的には県外に設置される施設で最終処分を行う予定だという。

 仮置き場では、除去物を収容した容器を土のうや遮水シートで覆うなど、放射線を遮蔽(しゃへい)したり、周囲に放射性物質が流出しないようにしたりするなどの対策を講じて管理している。しかし、保管が長い期間にわたれば、経年劣化や動物による損壊などのリスクも出てくるため、定期的な点検と補修は欠かせない。

photo 仮置き場の構造(出典:ふくしま復興ステーション)

仮置き場の点検業務に「ドローン」を導入した南相馬市

 この点検業務を効率化しようと、ドローンを導入した自治体がある。それが南相馬市だ。同市では、竹中工務店、竹中土木、安藤ハザマ、千代田テクノルで構成される共同企業体(JV:ジョイントベンチャー)が市の委託を受け、除染作業を実施している。

 市内に設置された仮置き場は160カ所、その総面積は1.6平方kmにも及ぶ。仮置き場の高さは3メートルほどあり、作業員が2カ月に1回ほどの頻度で、積み上げられたコンテナにはしごを掛けて登り、目視で一円玉程度の大きさの破損を探していたという。しかし、内部に空洞があったり、転落したりといった危険があるなど、人による目視点検には課題も多かった。

photo 仮置き場の様子。高さ3メートルほどある区画が延々と続いている(出典:エアロセンス)

 そこで、自律飛行型ドローン「AEROBO(エアロボ)」を展開するエアロセンスが、ドローンを使った空撮による点検を提案した。同社はソニーとZMPが出資して設立した合弁会社で、ドローンに関するデータをクラウド上で管理し、データ処理や解析を行う「AEROBOクラウド」といったサービスも提供している。

 まずは、対象の場所にGPS測量機能を内蔵したマーカー「エアロボマーカー」を一定の間隔で設置。地上10メートルの高さでドローンを1区画(約1万平方メートル)につき30分程度、自動飛行させ、100〜500枚の高精細な写真を撮影する。その後、マーカーから得られた3次元の位置座標を基に、解析ソフトウェアの撮影データをつなぎ合わせて高解像度の3Dモデルを作成する。この3Dモデルを確認することで、破損が分かるという仕組みだ。

 結果、この手法は南相馬市に採用され、2015年12月にテストをスタート。2016年6月に本格的な点検作業を開始するに至った。しかし、この方法にも課題がないわけではなかったという。

photo 空撮画像からマーカーを検出するのには、オープンソースのライブラリである「OpenCV」や「TensorFlow」を使用したという
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