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» 2019年01月30日 07時00分 公開

Mostly Harmless:2019年は「ブロックチェーンの年」になるか?

暗号通貨の暴騰で“汚名を着せられ”てしまった「ブロックチェーン」ですが、テクノロジーとしてはさまざまな可能性を秘めた技術といえます。今後の活用の行方を探ってみましょう。

[大越章司,ITmedia]

この記事は大越章司氏のブログ「Mostly Harmless」より転載、編集しています。


 ブロックチェーンについては、2016年頃から取り上げてきました

 当初は「金融業界を破滅させる」とまでいわれ、私も「世の中に存在する仲介業務をなくしてしまうかもしれない」と書いた「ブロックチェーン」ですが、ブロックチェーンを生み出したビットコインなどの暗号通貨が投機の対象になって相場が乱高下し、取引所がハッキングされ、運営側の仲たがいが起こり、揚げ句の果てに大暴落したために、暗号通貨もろとも「高リスク」「役立たず」「期待外れ」の烙印を押されてしまいました。

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 しかし、以前も書きましたが、ブロックチェーンと暗号通貨は切り離して考えるべきなのです。暗号通貨が崩壊しようとも(私自身は、元に戻っただけで崩壊したわけではないという認識ですが)、ブロックチェーンの可能性とは別の問題です。

 毀誉褒貶(きよほうへん)が激しい技術でしたが、日経コンピュータの2019年1月10日号でも「2020年の本命技術」(2019年ではなく)として取り上げられており、ようやく実用化の段階に入りそうです。

 実装面での工夫の余地はまだあるでしょうが、2019年には、いろいろなソリューションが出てきて、実用化が一気に進むのではないでしょうか。MITテクノロジーレビューでも、年頭にこんな記事を出しています。

金融システムの大革命になると思われたブロックチェーンは2018年、暗号通貨市場の歴史的崩壊によって期待外れに終わったように見えた。だがテクノロジーとしてのブロックチェーンは健在であり、2019年にはごく当たり前のテクノロジーになるだろう。

 私も全く同じ意見です。ただ、ブロックチェーンという言葉には、悪いイメージがついてしまったので、あえてそう呼ばないとか、違う呼び方になっていくのかもしれません。

 こちらのForbesの記事は、若干、辛口ですが、ブロックチェーンにはポテンシャルがあるという認識は同じです。ただ、「何でもかんでもブロックチェーン」というのはおかしいとも書いています。

 この記事の中で紹介されていた、アメリカ国立標準技術研究所(NIST)による「役に立つブロックチェーンの条件」が面白いです。詳しくは記事を読んでいただくとして、ここでは、項目だけを挙げておきます。

  1. 一貫し、共有されたデータストア(データを保存するソフトウェア)が必要か?
  2. 二つ以上の実体がデータを提供する必要があるか?
  3. 一度書き込まれたデータ記録は、決して更新も削除もされないか?
  4. 機密の識別子がデータストアに書き込まれることはないか?
  5. 書き込みアクセス権のある実体が、データストアを誰がコントロールすべきか決めるのは難しいか?
  6. データストアへの全ての書き込みの、改ざん防止されたログが欲しいか?

まずはお金の関係しないところ、あるいは管理型

 では、取りあえず、どのような用途が考えられるのでしょうか?

 MITテクノロジーレビューの記事にあるように、トレーサビリティーなどは現時点での活用法としてはよいと思います。不正行為をしても大したメリット(=もうけ)がなければ、ハッキングされにくいでしょう。技術が不安定な時期に、暗号通貨が暴騰したことは、その意味では不幸でした。あまりお金に直接関係ないところから、徐々に普及させていけばよいのではないでしょうか。

 また、当面はビットコインのようなフルオープンのモデル(パブリックチェーン)ではなく、管理者を置いたプライベート型かコンソーシアム型がよいのではないかと思います。今のブロックチェーン技術では、改ざんを完全には防げないという指摘もされています。

暗号通貨にも役割と可能性はあり、なくなってほしくない

 冒頭に暗号通貨の暴落と崩壊について書きましたが、これは、暗号通貨の価値が上がったことで、不幸にも投機の対象となってしまったために起こったことです。

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 しかし、暗号通貨には、これまでの通貨になかった特徴とメリットがあります。なくなってしまっては困る人が多くいるのです。

 通常の通貨は国家が発行し、国家が価値を保証することで信用を与えています。日本などの先進国では、国家に信頼がおけるため、通常の通貨の価値は安定し、安心して保有していられますが、世界には信頼できない国家の方が多いのです。通貨を持っていても、その価値は明日にはどうなるか分かりません。だから、皆ドルに替えて持っていたいわけですね。そういった場合には、暗号通貨の方がよほど信頼できる(た)のです。

 2018年のような乱高下は、暗号通貨の設計時には想定されていなかったでしょう。不安定な国家が発行する通貨よりも安定し、送金手数料も(ほぼ)かからないビットコインは、2017年くらいまでは途上国でこそ必要なものとされていました。

 国家から独立し、政治的な介入を受けない通貨としての暗号通貨には、大きな役割と可能性があります。相場がもう少し落ち着いてくれれば、その本来のメリットを生かした活用の場は非常に大きいと思います。

 

著者プロフィール:大越章司

外資系ソフトウェア/ハードウェアベンダーでマーケティングを経験。現在はIT企業向けのマーケティングコンサルタント。詳しいプロフィールはこちら


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