Microsoftは、「Amazonと戦う流通業者」の救世主になれるかWeekly Memo(2/2 ページ)

» 2019年02月04日 13時00分 公開
[松岡功ITmedia]
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WalmartとMicrosoftがAmazon対抗勢力に

 さて、ここからは今回のテーマにおけるパートナーシップと対立構図に注目したい。

 藤井氏はグローバルにおける流通業者とのパートナーシップとして、図3に示すように、米国の流通業では売上高ランキング1位の米Walmart(ウォルマート)や2位のKroger(クローガー)などと戦略的提携を結んでいることを説明した。

Photo 図3 グローバルにおける流通業者とのパートナーシップ(出典:日本マイクロソフトの資料)

 とくに、2018年7月にパートナーシップを結んだWalmartとは、5カ年計画で“共創”し、インテリジェントリテールを実現しようというもので、米Microsoftの流通業向けビジネスの象徴的な事例となっている。それを踏まえて藤井氏は、「まだ公表できる段階ではないが、日本でもWalmartとのパートナーシップのような象徴的な事例を紹介できるようにしたい」との意気込みを語った。

 筆者が注目したのは、この藤井氏の発言である。すなわち、日本マイクロソフトの流通業向けビジネスでもフラグシップになるような事例を公表できるようにしたい、というわけだ。

 ちなみに、同社は今回の会見で、Smart Storeの賛同事業者としてイオンやローソンの名を挙げたが、藤井氏が言う「まだ公表できる段階ではない」のならば、もっと象徴的な事例としてのパートナーシップが今後、公表されるのかもしれない。

 なぜ、そうした象徴的な事例に執着するのか。それは、米国においてWalmartとMicrosoftのパートナーシップが、今や流通分野の巨大なディスラプターとなったAmazon.comの対抗勢力の急先鋒と見られているからだ。

 つまり、Amazonの脅威にさらされている流通業者にとっては、デジタル変革を推進するパートナーとしてMicrosoftに頼る構図ができ上がりつつあるのだ。藤井氏の発言は、そうした米国での“追い風”を日本でも吹かせたいとの思惑によるものである。

 そう考えていくと、Microsoftはデジタル変革をテコに、Amazonと競合する流通業者を支える存在として、Amazon Web Services(AWS)だけでなくAmazon.comの対立軸になり得るかもしれない。それは日本でもしかりである。だからこそ、象徴的な事例になるパートナーがどこなのかが気になるところだ。

 会見終了後、藤井氏へのぶら下がり取材で幾つかの具体名を出して探りを入れてみたが、やはり「言えない」の一点張りだった。ただ、「実際に進行中」なのは確かなようだ。果たして、対立構図にどれほどのインパクトを及ぼすものになるか。その名が公表されるのを注視して待ちたい。

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