Einsteinは、図2に示すような4段階の機能を持つコンポーネントからなる。大量のデータから傾向やパターンを発見する「DISCOVER」、傾向やパターンから次に起こることを予測する「PREDICT」、予測に基づいた推奨を行う「RECOMMEND」、推奨した内容の自動化を図る「AUTOMATE」が、それである。
早川氏はこの点について、「一般的なAIは予測までだが、Einsteinは自動化までの機能を持つ。こうしたことから、私たちはEinsteinを“CRMアシスタント”と呼んでいる」と説明した。
この4段階の機能とともに、同氏がEinsteinの最大の特長として挙げたのは、図3のようにSalesforce CRMのアプリケーション画面にAIが埋め込まれていることである。すなわち、営業担当者が日々利用するアプリケーション画面でのさまざまな処理を、Einsteinが適時アシストしているのだ。この点が、冒頭で紹介した同氏の発言の「これまで」の部分である。
では、冒頭の発言における新たな話として、顧客自らもカスタマイズできるようにした“カスタムAIプラットフォーム”とは、具体的にどのようなものなのか。それを示したのが、図4である。
この図の見方としては、最上部が4つのSaaSによるアプリケーション層で、その下に共通の分析基盤として「Einstein Analytics」が位置付けられている。また、最下部はデータで、その上にはデータディスカバリーなど、EinsteinのベースになるAI技術が位置付けられている。そして、それらの間に挟まれた濃い青色の層が「Einstein Platform」、これがすなわちカスタムAIプラットフォームのことである。
Einstein Platformには、図のように、現在6つの機能部品が用意されている。一方、図5に示したのが、それぞれのSaaSに埋め込まれているEinsteinの技術群である。ご覧いただければお分かりの通り、Einstein Platformの機能部品はこれらの技術群の中から、顧客のカスタムニーズに応じてピックアップしたものである。
早川氏はEinstein Platformについて、「お客さまがカスタム利用しやすいように、柔軟に組み合わせて使いやすい機能部品を用意した」と説明。さらに、「これを機にEinsteinをもっと幅広く活用していただけるように努めたい」と意欲のほどを語った。
同氏の発言を聞いて頭に浮かんできたのは、“AIの民主化”という言葉だ。AIを多くの人たちに使ってもらえるように、との意図が込められているが、その大きな要素となる「使いやすさ」についての論議はあまり聞いたことがない。その意味でEinstein Platformの動きは、AIの民主化に波紋を投げかけそうだ。
さらに、会見後、早川氏に話を聞いたところ、今後、Einstein Platformのオープンソース化も進めていく計画があるようだ。そうなると、EinsteinはSalesforce CRMの世界を飛び出す可能性さえある。その意味でもEinsteinの動向に注目しておきたい。
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