業務部門が自ら“AIをカスタマイズ”可能に Salesforceは“AIの民主化”を加速させるのかWeekly Memo(2/2 ページ)

» 2019年03月04日 13時00分 公開
[松岡功ITmedia]
前のページへ 1|2       

Einstein PlatformはAIの民主化に波紋を投げかけるか

 Einsteinは、図2に示すような4段階の機能を持つコンポーネントからなる。大量のデータから傾向やパターンを発見する「DISCOVER」、傾向やパターンから次に起こることを予測する「PREDICT」、予測に基づいた推奨を行う「RECOMMEND」、推奨した内容の自動化を図る「AUTOMATE」が、それである。

Photo 図2 Salesforce Einsteinの機能(出典:セールスフォース・ドットコムの資料)

 早川氏はこの点について、「一般的なAIは予測までだが、Einsteinは自動化までの機能を持つ。こうしたことから、私たちはEinsteinを“CRMアシスタント”と呼んでいる」と説明した。

 この4段階の機能とともに、同氏がEinsteinの最大の特長として挙げたのは、図3のようにSalesforce CRMのアプリケーション画面にAIが埋め込まれていることである。すなわち、営業担当者が日々利用するアプリケーション画面でのさまざまな処理を、Einsteinが適時アシストしているのだ。この点が、冒頭で紹介した同氏の発言の「これまで」の部分である。

Photo 図3 アプリケーション画面に埋め込まれたAI(出典:セールスフォース・ドットコムの資料)

 では、冒頭の発言における新たな話として、顧客自らもカスタマイズできるようにした“カスタムAIプラットフォーム”とは、具体的にどのようなものなのか。それを示したのが、図4である。

Photo 図4 Einstein Platformの位置付け(出典:セールスフォース・ドットコムの資料)

 この図の見方としては、最上部が4つのSaaSによるアプリケーション層で、その下に共通の分析基盤として「Einstein Analytics」が位置付けられている。また、最下部はデータで、その上にはデータディスカバリーなど、EinsteinのベースになるAI技術が位置付けられている。そして、それらの間に挟まれた濃い青色の層が「Einstein Platform」、これがすなわちカスタムAIプラットフォームのことである。

 Einstein Platformには、図のように、現在6つの機能部品が用意されている。一方、図5に示したのが、それぞれのSaaSに埋め込まれているEinsteinの技術群である。ご覧いただければお分かりの通り、Einstein Platformの機能部品はこれらの技術群の中から、顧客のカスタムニーズに応じてピックアップしたものである。

Photo 図5 それぞれのSaaSに埋め込まれている Einsteinの技術群(出典:セールスフォース・ドットコムの資料)

 早川氏はEinstein Platformについて、「お客さまがカスタム利用しやすいように、柔軟に組み合わせて使いやすい機能部品を用意した」と説明。さらに、「これを機にEinsteinをもっと幅広く活用していただけるように努めたい」と意欲のほどを語った。

 同氏の発言を聞いて頭に浮かんできたのは、“AIの民主化”という言葉だ。AIを多くの人たちに使ってもらえるように、との意図が込められているが、その大きな要素となる「使いやすさ」についての論議はあまり聞いたことがない。その意味でEinstein Platformの動きは、AIの民主化に波紋を投げかけそうだ。

 さらに、会見後、早川氏に話を聞いたところ、今後、Einstein Platformのオープンソース化も進めていく計画があるようだ。そうなると、EinsteinはSalesforce CRMの世界を飛び出す可能性さえある。その意味でもEinsteinの動向に注目しておきたい。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ