「バイオハザード」「モンスターハンター」「ストリートファイター」などの人気ゲームをはじめ、最近ではeスポーツも手掛けるカプコン。かつては担当者が数日かけてExcelでデータを集計していたという同社では、業界のデジタル化をきっかけに、全世界の拠点で“脱Excel”を敢行しているという。
データ活用や分析のニーズが高まる中、いまだに多くの企業を悩ませるのが脱Excel問題だ。「表計算」「リスト作り」といったExcelに適した用途なら良いものの、本来なら他のツールを使った方が早く済む用途にまでExcelを使い続け、かえってその状態から抜け出せなくなってしまう……。そんな“穴”から今着々と脱出中の大企業がある。大手ゲーム企業のカプコンだ。
「バイオハザード」「モンスターハンター」「ストリートファイター」など、世代を超えて有名な数々のゲームを手掛けてきた同社。米国、欧州、アジア各国に営業やプロモーション、開発などの各部門を展開する他、2018年2月にはゲームプレイヤーたちが実力を競い合う、いわゆる「eスポーツ」に国内でも本格的に進出した。
そんな同社では、一体どんな形で脱Excelが起こったのか。「ゲーム業界のデジタル化が、全てのきっかけだった」と、同社の執行役員であり、デジタルマーケティング部の部長を務める赤沼純さんは語る。
「従来のゲームは、CDやカセット型にパッケージされた商品を店舗で買うものでした。ゲーム会社のビジネスモデルも、お客さんにゲームを売る小売店に商品を卸す、いわゆる『B2B』だったわけです。
しかし、最近はオンラインでゲームを直接ダウンロードするお客さんが増え、ビジネスが『B2C』に近い形に変わりつつあります。そのため、従来はTVや雑誌といったマスメディアを通していたマーケティングも、今後はデータを通してリアルタイムにお客さまのことを知れるような形に変えなくてはなりません。しかし、それを実現するためには、『どこに、どんなお客さんがいて、どのゲームを買ったか』というデータが圧倒的に足りない、ということが社内で分かったのです」(赤沼さん)
一方同社では、これまで世界各地の拠点で、担当者がExcelを使ってデータをまとめるのが普通だった。各所で発生するデータは、ばらばらに集計、管理されていたが、ただでさえ広い市場にデジタル販売の拡大が加わり、膨大なデータが集まるようになったことで、こうした“データ集計作業”の冗長化が問題になり始めた。
「例えば、定期的な経営会議に“各ゲームの売り上げ”といった数字を提出する際も、担当者がExcelを使い、数日かけてやっと数字を集計していました。やっと経営陣に数字を見せられたときは、既に集計から1週間もたっていて、『数字が古過ぎる』と言われてしまうこともしばしばでした」(赤沼さん)
販売やプロモーション、開発といった業務に関連するデータも増加し、「全世界のあらゆる拠点で、膨大かつ多様なデータが飛び交っていた」(赤沼さん)という同社。混乱する現場を何とかして脱Excelさせ、データ集約や管理、活用の仕組みを変える時期が来たことは明らかだった。
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