“終わらないデータ集計”から社員を救え カプコンがBI導入で挑む脱Excelゲーム市場の変化が後押し(2/3 ページ)

» 2019年03月11日 08時00分 公開
[高木理紗ITmedia]

経営陣のサポートを得て、全世界で使えるBIツールを導入

 そこで赤沼さんと、同じくデジタルマーケティング部の池田ひかるさんの二人は、自社に合ったBI(ビジネスインテリジェンス)ツールの検討を2018年1月に開始。そこで注目したのが、米国企業DomoのBIツール「Domo」だった。

  カプコンの開発部門では、既に「Tableau」を運用していたものの、赤沼さんたちの用途には、Domoが最適だったという。同ツールは、企業のクラウドやオンプレミス環境などで動くデータベースや各種システム、アプリケーションなどからデータを集約し、リアルタイムで更新、可視化する。

 「選定に当たって、『全世界の拠点で使えること』『複数のデータ形式やファイル形式に対応していること』『さまざまなツールをつないで使えること』の3つの条件を満たすのはDomoでした。特に3点目の、さまざまなツールを使うためのAPI(Application Programming Interface)を公開している点は、世界各国の拠点で使われているツールからデータをつなげたい当社にとって、非常に重要でした。

 経営陣も、データを活用したビジネスモデルへの変革が必要だという認識は同じでしたから、導入を相談した時は『すぐやって!』と言ってもらえましたね」(赤沼さん)

 同社では、2018年2月にDomoの導入を決定。分析機能の充実したTableauをこれまで通り開発部門で活用しつつ、「全体的なデータの統合はDomoで、各データの深い分析はTableauで」といった使い分けを視野に入れているという。

社内に「失われた秘宝」が? 導入で得た思わぬ気付き

photo カプコンで実際に「Domo」を使っている画面の一例。まだ全社には普及してはいないものの「Excelでマクロを作るよりはずっと簡単な操作で済む」と赤沼さんは語る

 一見スムーズに導入が進んでいるようだが、その準備期間には、さまざまな苦労があったという。最初に立ちはだかったのが、ツールに取り入れるデータの整理だ。

 Domoの導入を控えた2018年初め、導入チームがまず行ったのは、社員への徹底的なヒアリングだった。「社内のあちこちに散らばっていたデータの所在や管理者を確認」「会社にとって本当に必要なデータの取捨選択」といった作業に数カ月を費やした結果、思わぬ気付きを得ることもあった。

 「ヒアリングの過程では、『データを判断する人のリテラシーがどれだけ重要か』に気付かされましたね。現場にはさまざまな課題意識を持った人たちがいて、実際に細かいデータを見ている社員もいました。一方で、肝心の『課題』を示すようなデータや経営陣が求めているようなデータが、現場から届かないケースが非常に多かったのです」(赤沼さん)

 現場のデータソースから何の加工もしない素の状態でデータを取り込み、必要に応じて最大限の知見を引き出したかったという赤沼さん。しかし、ヒアリングを通して知ったのは、「今まで現場が独断でデータの一部を切っていた」などの事実だった。

 現在同社では、全社へのDomo導入を進めているが、データの価値を損なわず、各部署や経営陣からの知見を最大限に引き出す意味でも、赤沼さんは「社員への啓蒙(けいもう)を進め、同時にデータを漏らさず共有することが重要」と語る。また、膨大なデータの中で方向性を見失うことのないよう、あらかじめ経営陣の求めるデータの内容やデータ活用のゴールを共有し、それに応じたKPIを設定する、といった工夫をしているという。

 実際に社内で同ツールを使うのは、現場でデータを扱う担当者や、そのデータを判断するチーム長や室長、部長といった役職付きの社員たちだ。彼らを対象にしたDomoの普及活動では、地道な工夫が続いているという。

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