“終わらないデータ集計”から社員を救え カプコンがBI導入で挑む脱Excelゲーム市場の変化が後押し(3/3 ページ)

» 2019年03月11日 08時00分 公開
[高木理紗ITmedia]
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4日かかっていた作業が十数秒で――現場を驚愕させた変化

 「今のところ、ExcelからDomoへ切り替わった作業の割合は、全体の10%程度でしょうか。販売チームでは、実際にDomoを使って毎週の収支報告を行っています。従来は、社内の各担当者からメールで送られてきたデータを、Excelで半日以上かけて集計していましたが、現在は指定の場所に必要なデータを送ってもらう作業以外の部分がほぼ自動化され、実働時間が30分程度で済むようになりました」(赤沼さん)

 同社では、準備期間を経て2018年7月に社内でお披露目を行い、同年10月からは、社員向けの「レクチャー会」を始めている。社員を各拠点から集めては、Domoの使い方を覚えてもらう、というものだ。

photo カプコンのeSports統括本部 デジタルマーケティング部の池田ひかるさん

 池田さんは、「レクチャー会は東京で既に2回開いたのですが、データの取り込みやグラフ化、可視化といった基本的なスキルを紹介しています。開発部門は大阪にあり、そちらではまだレクチャー会をできていませんが、連絡を取って個別に紹介しています。実際に使いこなす人たちも出てきていますし、彼らに現場で広めてもらうと、普及のスピードが上がりますね」と語る。

 2人は、こうした活動を通じて、Domoに取り込めるデータはそろっているものの、使い方が分からないので、いまだにExcelでマクロを組んでいる――といった社員にも、いずれはDomoを使ってほしいという。

 一方、実際に現場でDomoに触れた社員の中には、今まで経験したことのないスピードで必要なデータがまとまる様子にショックを受けることもあるという。例えば、赤沼さんが、Domoを使ってあるゲームの時期別売上データを十数秒で集約してみせると、後ろでその様子を見守っていた担当社員は、「その作業、今まで4日かけていたんだけどな……」と絶句したという。

データ活用の事例を新ビジネスに――BIツールを使う課題と希望

 カプコンでは今後、Domoに全社のマーケティングデータや販売データを取り込み、いずれは一つのプラットフォーム上で皆が同じ数字を見られる環境を実現しようとしている。

 「実際に、データを使う会議では徐々に報告のフォーマットをDomoにしています。最終的には全社員にとって必須のツールになるようにしたいですね。社員の習熟度を上げるためにも、Domoにはぜひ、オンラインで公開しているチュートリアル動画の日本語版を充実させてほしいです」(赤沼さん)

 Domoの活用を支える舞台裏では、社内データの緻密なチェックも進んでいる。デジタルマーケティング部の池田さんによれば、この作業は最も苦労が多い一方、各部署に掛け合って必要なデータセットを用意する過程では避けて通れないという。

 「特に、マスターデータを精査し、データ分析に悪影響を与える、いわゆる“ノイズ”を見つけて処理する部分は大変ですね。新たなデータが加わるたびに、この問題は必ず起こるのですが、複数のデータフローの間にさまざまな処理を行っているので、ノイズ自体の原因が見えにくいんです。今後AIなどの技術がさらに発達すれば、いつかは自動化できるかもしれません」(池田さん)

 こうした努力の先には、リアルタイムで得られるデータを、今後さらに変わっていくだろうゲーム業界のビジネスに生かす目標がある。

 「今は、新たにeスポーツなどのビジネスが立ち上がっています。そこでDomoを使い、データをフル活用しながら運営するような事例を作りたいですね。そうすれば必然的に、他の事業にとってもヒントになり、海外の事業拠点にも応用できると考えています」(赤沼さん)

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