原さん: 僕がITの業界に入ったのは2001年なんですが、僕より前からやっている方って、ハードのアーキテクチャからがっちり、しっかり理解して、アセンブラ(※)からやって……みたいな方々がほとんどです。
※アセンブリ言語のソースコードを、コンピュータが解釈できる機械語のプログラムに変換するソフトウェア
それと同じように、僕らはWindowsとかオープン系からスタートしていて、プログラムやハードウェアの概念を持っているんですけど、その概念すら持っていない人たちが出てきて、学ぶべきものも変わっていく。今までキャッチアップすべきだったものって、極端な話、必要なくなっているんじゃないかと。
ITを活用してどうするのかという方がどんどん重要になってきて、その“裏側”は見えなくなってきているわけです。マーケティングオートメーションやAIなどが進んでいった先には、ビジネスのやり方そのものが自動化されていくのではないかと感じています。AIからビジネスのアドバイスを受けたときに、「その根本って何なんだろう」と疑問を持っても、分かりようがない状態になるんじゃないかという不安はありますね。
虻川さん: その裏側の仕組みを知っているかどうかって、最適なものを選ぶときや、何か問題が起きたときの対処には、意外と差が出てくると思っています。
原さん: 僕もそう思っています。でも例えば、LAN Managerを知らなくてもネットワークを組めるようになっているわけで。
虻川さん: サービス化が進めば、使う側は知らなくてもいい技術が出てくるのも確かですね。何をどこまで把握しておくべきかを考えることも、重要なポイントなのでしょうね。
――お二方に共通しているのは、システムを自分や社内で開発することで効果を上げていることかと思います。最近はエンタープライズITでも「内製化」がトレンドになりつつありますが、その点についてはどうお考えですか?
原さん: 開発環境が準備しやすくなったり、技術の学習がしやすくなったりと今までいろいろと話してきましたが、結果として、内製化がすごくしやすい環境になってきたんですよね。少人数でも、スピードがすごい上がった状態で、いきなり内製化できちゃう。最小限のナレッジと最小限のコストでスタートできるというわけです。
虻川さん: その通りですね。内製化をする一番の目的はスピード感です。やっぱり外注しようとすると、要件を決めて見積もりをもらうというやりとりだけで1カ月たつなんてことはよくありますよね。手間も時間もお金もかかるので、極力減らしていきたいです。「環境が整ってきているから、スピード感を出せる内製化をやらない理由がない」と思っています。
当社はaPaaSとして「kintone」を使っていますが、サブスクリプションモデルなので、いくつアプリを作っても、基本的には、社内工数以外のコストがかからないわけです。仮に、ここにコストがかかると稟議が必要になり、対応が遅くなってしまいますよね。
ただ、当社みたいな会社で内製化をするとなると、システム開発に精通した人ばかりという状況にはなりません。開発や運用の手間や難易度を考えて、「どこまでなら継続的にできるか」を見極める必要があります。当社では、それらを判断してkintoneにしました。あと、ユーザーの業務の変化に迅速に対応できるという点も満足度が高いですね。
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