虻川さん: 今まではSIerが、例えばホテル向けのパッケージとか、バス会社向けのパッケージとかを作っていたことが多いけれど、ユーザー企業自身がシステムを作って、横展開していくというケースも出てきていますよね。
内製したシステムではありませんが、京王電鉄バスも「ハイウェイバス ドットコム」という高速バス予約システムを作って、全国のバス会社にご利用いただいています。もともと自社業務のために作り始めたシステムですから、同業他社の方々にも“かゆいところに手が届く”システムになっていると思います。その点は強いですよ。
原さん: そうなるとSIerは勝ち得るんですかね?
虻川さん: SIerにとっては、クラウド化やアプリプラットフォームなどのサービス拡大によって、今までと同じような仕事は減っていくと思います。AIやIoT案件は増えていると思いますが、コモディティ化が進むと、それもまたユーザーが直接使えるようになる。セミナーなどでは、ユーザー企業のシステム部門要員数とSIerの要員数の比較を日米間で行っている資料をよく見ますが、日本ではユーザー企業側の要員が圧倒的に少ない。だから、今までの仕事の仕方では、SIerに頼る部分が大きいのだと思います。
他にも、エンタープライズ企業のCIO間でよく話題になるのは、「システムのドキュメントが欲しいから、SIerを挟んでいる」というケースです。もちろん、ドキュメントもスリム化した方がいいのですが、やっぱりエンタープライズ系の企業は、まだまだしっかりとしたドキュメントを残すという文化が根強く残っています。監査もありますし。ドキュメントが全てではありませんが、今後、SIerも今までとは違った立ち位置で、付加価値を生む企業が増えていくのではないでしょうか。
――先ほど「SIerからうらやましがられる」という話がありましたが、SIerからユーザー企業に人材は動いていくのでしょうか。
虻川さん: 先ほどの米国の例のように、今後はユーザー企業がシステム要員を内部に多く抱える企業が増えていくのではないでしょうか。ただ、全国的にシステム要員不足は深刻なので、選ばれるユーザー企業にならなければ、人が採用できない時代になってきていると思います。当社も選んでもらえる企業になるように頑張りたいですね。
原さん: 僕自身もSIerの人を誘ったことがあります。「すごい楽しそう」と興味は持ってくれていたんですが、その時は都合がつかなかったですね。でも機会があったら、連絡してくれるみたいです。
虻川さん: 楽しみですね。ビジネスにICTが不可欠になってきている中で、ICTに関わっている人が「直接、ビジネスを動かす側に行きたい」という意識に持つケースが増えるのも自然なことなのかもしれませんね。
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