“北極星”を見失うな──Oracle傘下のクラウドERP、NetSuite創業者が語る「ブレない経営に不可欠なもの」SuiteWorld 2019 Report(2/2 ページ)

» 2019年04月03日 13時00分 公開
[浅井英二ITmedia]
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 ここ数年は、クラウドの恩恵を追求すべく、最短45日で導入できる「SuiteSuccess」への投資を加速している。SuiteSuccessは、金融、製造、小売り、サービス、ソフトウェアといった業界ごとに開発したエディションを提供、さらに業界ごとのセールスやデリバリー、サポートの手法をとりまとめたものだ。おおまかな業界ごとのベストプラクティスだけでなく、例えば、小売りのエディションであればさらに「アパレル」や「書店」といった粒度で差分も開発し、エディションを細分化していくという。ぴったりとフィットし、すぐに使えるクラウドの恩恵を最大限に生かせるERPの実現が狙いだ。

 この日の発表では、卸売りや製造、ソフトウェア企業向けといった既存のSuiteSuccessが機能強化されたほか、各国でERP/財務会計の導入を迅速に進められる「International SuiteSuccess Financials First Edition」がリリースされた。第一弾は、中国、フランス、ドイツ、インド、シンガポール、そして日本の6カ国で、各国の税制にも対応している。

「がんのない世界」を目指す米国がん協会

photo 患者のキャシー・パテノード氏とステージに上がったAmerican Cancer Societyのロブ・キングCFO(右)。左はOracle NetSuiteのエバン・ゴールドバーグ執行副社長

 成長のために欠かせない能力の筆頭に「可視化」を掲げたゴールドバーグ氏は、American Cancer Societyのロブ・キングCFOをキーノートのステージに招き上げた。キング氏は同協会のシステム刷新に取り組んでおり、わずか1カ月前にNetSuiteを稼働させたばかりという。

 「米国には150万に上る非課税法人があり、4100億ドルもの寄付で運営されている。彼らにも可視化は求められている」とゴールドバーグ氏。

 American Cancer Societyは、1913年に設立され、100年以上の歴史を誇る。ジョージア州アトランタを本拠とし、全米900カ所に拠点を展開、数千人の職員が150万人ものボランティアの協力を得て、情報提供やがん患者支援、そして、がんに関する調査研究などに取り組み、米国のがん対策を推進している。主に寄付などでまかなわれている年間予算は46億ドルに上るという。

 キング氏は、「米国においては、この1年だけで176万2450人ががんの宣告を受け、60万6880人が亡くなった。われわれのミッションは、がんのない世界をつくること。患者へのさまざまな支援を拡充するだけでなく、がんワクチンの投与や禁煙の法制度強化といった予防対策にも力を入れて取り組んでいる。NetSuiteのおかげで、より多くの力を患者支援やがんの撲滅に注げるようになる」と期待を込める。

 ゴールドバーグ氏は、「コントロール」についても、NetSuiteで実践する顧客を紹介し、いかにその能力が企業の成長に欠かせないかを強調した。

 1990年代の半ばにカナダのモントリオールで設立され、現在はニューヨークのブルックリンに本拠を置くVice Mediaは、ジャーナリズムとPOPカルチャーが融合した若者向けのメディアを運営する。オンラインメディアの他、テレビ番組の制作やマーケティング事業も展開する。世界30カ国以上に拠点を展開、メディアの月間UV(ユニークビジター)はグローバルで1億人に上るという。

 同社でチーフ・アカウンティング・オフィサー(最高会計責任者)を務めるショーン・アサド氏は、「多くの新興企業が、ある程度規模が大きくなると壁に突き当たってしまう。しばしば創業者が商品やサービスにしか関心を寄せないからだ。企業が成長し続けるためには、コントロールされた組織づくりと適切な人材が欠かせない」と指摘する。

 NetSuiteが2017年に発表したSuitePeopleは、顧客とのトランザクション、つまり業績に社員もひも付けて管理するというユニークな特徴を持つ。ゴールドバーグ氏は、「単一の統合されたシステムだからこそ企業の成長を加速できる」と話す。

編集協力:日本オラクル株式会社

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