ラスベガスでクラウドERPの雄、NetSuiteの「SuiteWorld 2019」カンファレンスが開幕した。創業者でもあるエバン・ゴールドバーグ執行副社長は、企業がブレずに成長を目指すには、「可視化」「コントロール」、そして「アジリティ」の能力が不可欠だと話す。
砂漠のオアシスとして発見され、ゴールドラッシュで栄えたというカジノの街、ネバダ州ラスベガスは、日本がちょうど平成の世になった1990年代から怪しいネオンサインが影を潜め始めた。今ではニューヨークやパリ、ローマ、果てはエジプトのルクソールをテーマにした巨大なホテルが軒を連ねるコンベンションやショッピングの街でもある。
米国時間の2019年4月2日、ネバダ州ラスベガスのベネチアンホテルでクラウドERPの雄、NetSuiteの「SuiteWorld 2019」カンファレンスが開幕した。同社はこれまで地元サンフランシスコのホテルやサンノゼのコンベンションセンターで年次ユーザーカンファレンスを開催してきたが、Oracleによる買収後、2017年からはイタリアのベニスをテーマにしたカジノホテルに会場を移している。
「企業には、その“北極星”ともいえる創業時からのビジョンがある。実際のビジネスには紆余曲折があるが、企業がブレることなく成長し、さらなる高みを目指すには、北極星を見失ってはいけない。そのためには可視化とコントロール、そしてアジリティが特に大切だ」──そう話すのは、NetSuiteの創業者の一人で現在も同事業部門の責任者を務めるエバン・ゴールドバーグ執行副社長。
Oracleによる買収後もNetSuiteは独立した事業部門として維持され、ブレることなく、さらに積極的な投資が行われてきている。その狙いについて、キーノートへの「飛び入り」が恒例となったOracleのマーク・ハードCEOは、「継続的な投資とOracleのリソースを活用して、国際化やマイクロバーティカル化(業種の拡充)を進め、新興企業や中堅・中小向けのクラウドERPでナンバーワンの地位をより確かなものにしていく。企業向けアプリケーション市場は確実にクラウドに移行している。NetSuiteはOracleのクラウド戦略にとってカギとなるものだ」と話す。
NetSuiteは、ERP/財務会計、顧客管理、そしてe-コマースなど、企業の業務全体を統合された単一のクラウドスイートでカバーしようという野心的なもの。Oracleの技術者だったゴールドバーグ氏が20年前に独立し、単に総勘定元帳をコンピュータシステムに載せ換えるという従来の発想ではなく、顧客とのトランザクションにひも付けて全ての情報をネット上で一元管理できる柔軟なプラットフォームを開発した。
このため、NetSuiteはERPでありながら、例えば、CRMやSCMを別建てのシステムで構築する必要がない。顧客を軸にして、営業、受注、配送、請求書、サポートなど、一連の業務を継ぎ目なく進められる他、ビジネスインテリジェンス機能とダッシュボードを併せて提供し、「可視化」「コントロール」、そして「アジリティ」を実現、効果的な新製品の投入やサービスの改善を支援できるのが特徴だ。
同社の主要な顧客である新興企業は、財務会計の機能を使い始め、段階的にCRMやe-コマース、SCMの機能を追加し、ビジネスを成長させられる。さらには「Intelligent Suite」と呼ばれる、一連のAI機能もいよいよ2019年から順次組み込まれ、例えば、製品のビジネスでは、顧客セグメントの分析、サプライチェーンの最適化、納品遅延の予測や解決策の提案など、さまざまな業務で活用できるようになるという。こうした、顧客企業の成長に先回りした継ぎ目のない機能拡張こそがNetSuiteの最大の強みといっていい。
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