“失敗の経験”から生まれた、変化することへの貪欲な姿勢――日立製作所に見るデジタルビジネスの進め方Weekly Memo(1/2 ページ)

日立製作所がIoTを軸にしたデジタルビジネスを加速させ、全社的な取り組みへと発展させている。同社のデジタルビジネスの進め方は、多くのユーザー企業にも参考になるのではないだろうか。

» 2019年06月10日 12時20分 公開
[松岡功ITmedia]

デジタルビジネスプラットフォーム「Lumada」を全社展開

 「日立はデジタル技術を活用して社会やお客さまの課題を解決する社会イノベーション事業でグローバルリーダーを目指す」――。日立製作所(以下、日立)の東原敏昭社長は、同社が先頃開いた投資家向け事業戦略説明会でこう力を込めた。2019年度(2020年3月期)からスタートした「2021中期経営計画」のスローガンとして打ち出したものである。

Photo 投資家向け事業戦略説明会で話す日立製作所の東原敏昭 執行役社長兼CEO

 今回は、この説明会から日立のデジタルビジネスの戦略や推進体制、すなわち進め方に注目したい。実はそれが多くのユーザー企業にとっても参考になるのではないかと考えたからだ。以下、同社が説明会で使用した7枚の図を基に話を進めたい。

 図1は、2021中期経営計画の戦略を端的に表したものである。2019年度から事業推進体制を成長分野の5つのソリューションに再編し、それらによって「社会価値」「環境価値」「経済価値」といった3つの価値を提供することで、人々の生活の質や顧客企業の価値を向上させていくことを示している。図1で注目されるのは、同社が「デジタルビジネスプラットフォーム」と位置付けている「Lumada(ルマーダ)」が戦略全体のベースになっていることである。

Photo 図1 2021中期経営計画の戦略(出典:日立製作所の資料)

 Lumadaとは、日立グループの幅広い事業領域で蓄積してきた「制御・運用技術」(OT:オペレーショナルテクノロジー)と、「AI」(人工知能)や「ビッグデータ収集、分析などの情報技術」(IT)を組み合わせて、顧客にとって最適なソリューションを提供する製品およびサービス群のことだ。日立はLumadaをかねて「IoT(Internet of Things)プラットフォーム」と呼んでいたが、今ではデジタルビジネスプラットフォームと位置付けている。

 図2は、5つのソリューションに再編された全社の組織体制である。ITセクターを担当する執行役副社長の塩塚啓一氏によると、「ITセクターはLumadaを軸とした日立全体のデジタルビジネスをけん引していく」とのこと。そのデジタルビジネスを全社横断で推進するのが、サービス&プラットフォームBU(ビジネスユニット)である。

Photo 図2 5つのソリューションに再編された全社の組織体制(出典:日立製作所の資料)

 図3は、ITセクターの目指す姿を表したものである。売り上げ収益4兆円、営業利益率15%を達成して、「IBMやAccentureと同じ青い領域のグローバルトップクラスを目指す」(塩塚氏)という。ITセクターにとって2021中期経営計画の達成は、その入り口に立てるかどうかの絶対条件となる。

Photo 図3 ITセクターの目指す姿(出典:日立製作所の資料)
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