「デジタルリーダーは10年先を見据えよ」――CEOに求められるデジタル改革の采配力とはWeekly Memo(2/2 ページ)

» 2019年07月22日 12時48分 公開
[松岡功ITmedia]
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CEOはデジタル変革の方向性とやり続ける覚悟を示せ

 4つ目は、「自社の技術戦略を自らリードしているか」。CEOにデジタル時代のリーダーとしての自覚を聞いたものである。図4のように、同意する割合として日本は77%となり、スペイン、米国、インドの上位3つとは10ポイント以上の差で、11カ国中11番目となった。

Photo 図4 自社の技術戦略を自らリードしているか?(出典:KPMGグローバルCEO調査2019)

 5つ目は、「フロント、ミドル、バックオフィスの連携を確保することは、これまで以上にCEOとしての自らの責任だと考えるか」。すなわち、顧客を起点とした社内横断的な連携を推進する積極的な姿勢があるか、を聞いたものである。図5のように、同意する割合として日本は70%となり、1位の米国とは22ポイントの差がついた形で、11カ国中8番目となった。

Photo 図5 フロント、ミドル、バックオフィスの連携を確保することは、これまで以上にCEOとしての自らの責任だと考えるか?(出典:KPMGグローバルCEO調査2019)

 実は、この5つ目の調査には、前振りの質問がある。それは、「フロントがミドルとバックオフィスとシームレスに連携していることが、より強固な顧客体験(カスタマーエクスペリエンス)を創造するカギだと考えるか」というものだ。これに対して「同意する」と答えた企業の割合を見ると、日本はオーストラリアの86%に続いて80%で2位となった。

 この結果はすなわち、デジタル時代にはより強固な顧客体験を創造することが必要であり、そのカギが質問にあるように「フロントがミドルとバックオフィスとシームレスに連携していること」であると、80%のCEOが認識していることを示している。それにもかかわらず、5つ目の調査結果は、その重要な戦略を自らの責任としているCEOが70%であることから、意識と行動に違いがある点を同調査は指摘している。

 さて、これらの調査結果を踏まえ、筆者は日本のCEOに対する素朴な質問として、図4を取り上げて「デジタルリーダーの自覚として他国と比べれば順位は低いが、77%と8割近いCEOには自覚があるとも見て取れる。これだけの割合のCEOが、本当にデジタル変革とは何かを認識しているとは思えないが、宮原さんの実感としてはどうか」と聞いてみた。これに対し、宮原氏は次のように答えた。

 「ご指摘通り、日本だけを見て77%のCEOがデジタルリーダーの自覚を持っているとの結果には、私も違和感を覚えた。これは、CEOとしてデジタル変革に取り組まなければいけないという危機感の表れではないか。とはいえ、『自分がリードするにしても何をやればいいのか分からない』というのが本音だろうと、私は考えている」

 さらに、宮原氏はこう続けた。

 「本当に大事なのは、デジタル変革に取り組む前に、自社にとっての10年先の顧客は誰なのか、今とどう変わるのか、そこに向けた自社の提供価値は何なのか、今とどう変わっていくのか、といったことをしっかりと議論することだ。この議論を進めている日本の企業はまだまだ少ない。デジタル変革のビジョンを実現したいのであれば、その手段として、何をどこからやるのか、どんな技術を使ってやるのか、を考えるべきだ。その執行役は、CEO自身でなくてもいい。CEOがCDO(最高デジタル責任者)を任命して動きやすいように権限を与えればいい。CEOはそうした仕組みを作って全社にデジタル変革の方向性を示し、経営トップとしてやり続ける覚悟を見せればいい。デジタルリーダーとしてのCEOの役目はそこにあるというのが、私の見解だ」

 冒頭で紹介した宮原氏の発言は、この質疑応答におけるやりとりのエッセンスである。今回はこの同氏の見解を本コラムのメッセージとしたい。

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