日本マイクロソフト、経営方針の注目点と平野拓也社長語録Weekly Memo(1/2 ページ)

日本マイクロソフトが7月からスタートした2020年度の経営方針を発表した。本稿では、「インダストリーソリューションへの注力を強調」および「最後の経営方針発表会見となった平野拓也社長の足跡」といった2つの観点で考察したい。

» 2019年08月26日 12時15分 公開
[松岡功ITmedia]

インダストリーソリューションに注力、そのビジネスモデルは

 「2020年に日本のナンバーワンクラウドベンダーになる」――日本マイクロソフトの平野拓也社長は、同社が2019年8月20日に開いた2020年度(2020年6月期)の経営方針発表会見で、前年度から引き続いてこのスローガンを強調した。

Photo 会見に臨む日本マイクロソフトの平野拓也代表取締役社長

 平野氏によると、ここでいう「クラウド」はIaaS(Infrastructure as a Service)、PaaS(Platform as a Service)、SaaS(Software as a Service)の全レイヤーを全て含めたものだ。よく話題に上るIaaS領域でのAmazon Web Services(AWS)とのシェアの差はまだまだ開きがあるとみられるが、日本ではIaaS領域でAWSを何とか追撃したい、との同氏の強い思いが込められた発言のように感じた。

 まずはスローガンの話から紹介したが、本稿では日本マイクロソフトの経営方針発表について、「インダストリーソリューションへの注力を強調」および「最後の経営方針発表会見となった平野社長の足跡」といった2つのトピックに注目していきたい。

 ちなみに、日本マイクロソフトの2019年度(2019年6月期)の業績は公開されていないが、平野氏によると「全事業およびクラウド事業の売上高の成長率とも、日本はグローバルを上回っている」とのこと。さらに、同氏が2015年7月に社長に就任して以来、売上高はこれまで4年間で2倍になり、グローバルで見てもトップレベルの成長を達成したという。

 2020年度の経営方針における重点施策としては、「お客さまのデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援する、信頼されるパートナーへ」をモットーに、「お客さまの業種業態に最適な支援(インダストリーソリューション)の推進」「モダナイゼーションの加速」「クラウド&AI人材の育成」の3つを挙げた。ここでは、1つ目のインダストリーソリューションに注目したい。

 平野氏はインダストリーソリューションについて、「DXに向けてさまざまな業種のお客さまからビジネスモデルの変革についてご相談いただくケースが増えてきた。そうした要望に応えたいと考えた」のが取り組みのきっかけだという。

 具体的には、「各業種のお客さまやパートナー企業との協業によってレファレンスアーキテクチャを整備し、展開していく」と、パートナー企業だけでなく「顧客との協業」が典型的なビジネスモデルになるようだ。図1および図2に挙げられているのが、注力分野である。

Photo 図1 エンタープライズ分野の注目インダストリー(出典:日本マイクロソフトの資料)
Photo 図2 公共分野の注目インダストリー(出典:日本マイクロソフトの資料)

 その上で、平野氏は次のように語った。

 「これまで日本マイクロソフトはプラットフォームおよびプロダクトを軸にビジネスを展開してきたが、これからはそれに加えて、インダストリーソリューションに一層注力していく」

 見方によってはプラットフォームビジネスの発展系ともいえるが、新たな競合とあちこちぶつかりそうな、結構踏み込んだ発言だと筆者は感じた。果たして、上記のような顧客との協業によるビジネスモデルを確立できるか、注目されるところだ。

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