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» 2019年08月26日 12時15分 公開

Weekly Memo:日本マイクロソフト、経営方針の注目点と平野拓也社長語録 (2/2)

[松岡功,ITmedia]
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次期社長に託される「日本のナンバーワンクラウドベンダー」

 もう1つのトピックは、同社が先頃、2019年8月31日付けで平野氏が社長を退任し、9月1日からMicrosoftでDXを推進する新組織となる大手システムインテグレーターを中心としたパートナービジネス部門を率いるバイスプレジデントに就任すると発表したことから、今回が同氏の最後の経営方針発表会見になったことだ。

 異動後の肩書が「バイスプレジデント」なので「本当に栄転か?」と見る向きもあるが、日本マイクロソフト社長としての4年間の実績を見れば、新組織のトップ就任はMicrosoftの期待の大きさを表したものだろう。

 そんな平野氏の社長語録として、筆者がこれまで取材してきた中で印象深かったコメントを3つ紹介しておこう。

 1つ目は、「クラウド事業はチャレンジャーの姿勢で強力に押し進めていきたい」。これは、同氏が2015年7月1日に新社長に就任することが決まったのを受けて、同年3月に会見した際に語った決意である。このコメントからも同氏にとってクラウド事業の拡大が、大命題だったことが分かる。

 2つ目は、「クラウド事業を全売上高の50%にすることが大切なのではない」。これもクラウド事業にまつわる話だが、2017年1月の会見でのコメントである。当時、同氏は「50%」に執着していたが、それは単に割合を拡大すればよいという話ではなかった。その理由は、次のようなものだった。

 「クラウド事業が全売上高の50%になれば、導入されたお客さまに継続して使っていただくための努力がなお一層不可欠になる。継続して使っていただくために、お客さまとどう対話していけばよいのか。パートナー企業とどう協業していけばよいのか。そうした取り組みをメインストリームの事業としてさらに磨き上げていく必要がある。50%という数字は目標だが、私としてはそうした取り組みを、メインストリームの事業としてしっかりと行っていけることを強く期待している」

 つまり、クラウド事業比率が50%になれば、日本マイクロソフトをクラウドサービスベンダーとして強靱な体質の企業に変革できる、というのが平野氏の狙いだった。これはまさしく経営者ならではの発想である。

 3つ目は、「入社14年目の私自身が過去の成功体験にとらわれないようにしたい」。これは、1年前の経営方針発表会見で、「日本マイクロソフトの今の課題は何か」と聞いた筆者の質問に対し、ビジネス面やマネジメント面で幾つか挙げた後に自身の課題として答えたものである。「好調なときほど気を付けよ」というのは経営の鉄則だが、1年前の平野氏はその戒めを強く意識していた印象がある。

 最後に、気になるのは2019年9月1日以降の日本マイクロソフトの経営体制だ。今回の経営方針発表会見では「まだコメントできない」(平野氏)とのことだったが、経営方針の中身は「関係者と一緒に作成した」(同)と言う。さらに、平野氏が9月以降も特別顧問として日本マイクロソフトに関与することを踏まえると、内部昇格の可能性も十分にあり得るだろう。

 経営方針発表会見後、平野氏に「実はもうそろそろ次のステージへ行きたいとの思いがあったのでは」と立ち話で聞いてみた。すると同氏は、「そんなことはない。実は社長就任時に、Microsoftに対して『5年やらせてくれるなら受ける』と言って承諾されたから就いた。でも結局は4年余りで異動になった」と、心残りな面をのぞかせた。

 筆者が失礼ながらこう尋ねたのは、存在感のあった某外資系大手の日本人社長からかつて、「現地法人の社長がやれることは限られる。4、5年もやれば、その権限のなさにもどかしさを感じるようになってくる」と聞いたことがあったからだ。結局、その社長は自ら転身していった。もちろん、外資系企業がどこも同じだとは思わないが、経営手腕の評価が高い平野氏だからこそ聞いてみた。

 では、平野氏は5年目で何を達成したかったのか。それこそが冒頭の発言にある「日本のナンバーワンクラウドベンダー」である。この大命題は、次期社長に託されることになる。

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