新システムを入れる、ただしカスタマイズはしない――社内の反対にぶれなかったコニカミノルタの決断幹部を支えた“過去の教訓”(1/2 ページ)

日本企業の多くが行うといわれるシステムのカスタマイズ。しかしコニカミノルタの調達部門は、新システム導入の際、社内の大反対に遭ってもカスタマイズを最小限に抑える決断を下した。その理由と、決断を支えた過去のある教訓とは。

» 2019年10月07日 07時00分 公開
[高木理紗ITmedia]

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 基幹システム導入の際、日本企業の多くが行うといわれるのがカスタマイズだ。社内独特の業務手順などに合わせた結果、導入作業の多くを占めることもある。一方、カスタマイズが原因で、アップデートや他システムとの連携で問題が起こるケースも多い。

 そんな中、ある基幹システムを導入する際、社内の反対に遭っても“カスタマイズをできるだけなくす”決断を通した大企業がある。それがコニカミノルタだ。

 カメラ企業だったミノルタとフィルム企業のコニカが合併してできた同社は、フィルム技術やレンズ技術、画像技術などを生かして3Dセンシングや蛍光ナノイメージング、オフィス向け複合機をはじめとする多彩な製品を扱う。その拠点は国内だけでなく、欧米やアジア、中東にも広がり、生産をメインに行う拠点や販売会社など、各地によって拠点の形態は異なるという。

 コニカミノルタは、2015年ごろ“間接材”と呼ばれる材料の調達システムを刷新しようと動き出した。間接材とは、製造過程の中で直接製品に乗せる“直接材”以外の物資で、工具や補修部材、消耗品、燃料などをさす。同社の場合、日本の拠点で大半の間接材を扱う中、その膨大な品目が各部門で別々に管理され、全体の可視化や最適化ができていなかったという。

各部門がばらばらに調達――膨大な間接材の可視化に踏み切ったきっかけ

コニカミノルタの生産本部 調達センター センター長を務める新(あたらし)善行氏

 生産本部 調達センターの新(あたらし)善行センター長は「これは、調達部門にもともとあった課題でした。それまでどちらかというと直接材を中心に取り扱い、スポット的に間接材の可視化に取り組んだことは過去にありましたが、継続していなかったのです」と話す。

 「購入する品目の数は膨大です。大規模な企業なら支出の大きいところに着目して管理しようとしますが、多くの場合、各部門がばらばらに管理、購入しています。コニカミノルタも同様でした」(新氏)

 企業価値を高める上で、コスト管理は“経済的な価値”に、コンプライアンスは“社会的な価値”につながるという。調達の業務の場合、それらをかなえる手段として、伝票をかき集めなくても調達の様子を常に可視化できる仕組みが必要――。そう考えた結果、同社が導入を決めたのが、SAPの「Ariba」だった。

 実は、同社の米国拠点が先行してAribaを導入していた。「欧州の拠点も、もうすこし簡易なツールを入れていましたが、日本やアジアは遅れていました。この状態をイーブンに持っていって、初めてシステム同士の連結が可能になり、アフリカや欧州も含んだワールドワイドの最適化が可能になる。また、物流やトラベルのツールは、共通の1社や2社と結べば、一番良い状態になると考えました」と、新氏は話す。

 同社は、2018年からSAPと話し合いを進め、Aribaを間接材調達の標準システムとして導入することを決断。その際、調達部門はあるこだわりを徹底した。それが「カスタマイズはできるだけしない」点だ。

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