では、顧客や従業員の声をデータとしてどのように収集して分析すればよいのか。熊代氏は「当社のソリューションで得られる『Xデータ』と企業が蓄積している『Oデータ』を組み合わせれば、改善に向けたインサイト(洞察)を得られる」と話した。
Xデータは「エクスペリエンスデータ」のことで顧客満足度、購入意向、従業員エンゲージメント、製品フィードバック、ブランド認知度などをアンケート形式で収集するものだ。
一方、Oデータは「オペレーショナル(業務)データ」のことで、販売・売り上げ、顧客情報、会計情報、人事・給与、更新率、生産・製品情報など、既存のITシステムで収集するものである。
これらを組み合わせれば、なぜ改善に向けたインサイトを得られるのか。例えば、売り上げの推移について、Oデータではどれだけ伸びているかを確認できるが、「なぜ」伸びているかは分からない。そこで、その理由を聞いたXデータを組み合わせることで、さらに深い分析が可能になるというわけだ。
Qualtricsは、Xデータの収集から管理、分析、そのデータに基づくアクションまでを同じプラットフォームで運用するソリューションとして、先述した4つのエクスペリエンスに対応した「Qualtrics XM Platform」を提供している(図2)。
このプラットフォームを構成するソフトウェア群は、図3に示す通りだ。この図で注目されるのは右端にある「インテグレーション+サービスエンジン」で、要はこれらのソフトウェアが親会社のSAPだけでなく、Salesforce.comやMicrosoftなどのソフトウェアとも連携して利用できることを示している。
Qualtricsは2002年に米国ユタ州プロボで創業。大学向けに開発、販売した市場調査をするためのアンケート収集・分析ソフトウェアが、現在のソリューションに発展した格好だ。ユニコーン企業として注目され、上場を目前としていたが、2019年1月にSAPに80億ドルで買収され、現在はSAPのグループ企業となっている。
熊代氏によると、SAP傘下ではあるが、独立した企業として今後も幅広い利用環境での事業を展開し、グローバルで現在3000人余りの従業員数を2023年には8000人まで拡大する計画。2018年に始めた日本での活動もXMの認知度向上をはじめ、サポート体制やパートナーエコシステムの強化を図っていく構えだ。
親会社となったSAPも今後XMには注力していく方針を打ち出している。まずは世界最大のOデータ活用ユーザーともいえるSAPの顧客企業に向けてQualtrics XM Platformを薦めていくことが大きなビジネスチャンスとなりそうだ。
熊代氏は会見で、日本企業にこう呼び掛けた。
「エクスペリエンスはいわば『おもてなし』。日本人のおもてなしは世界一といわれている。ぜひ日本企業の日常業務でも当社のソリューションを活用し、お客さまや従業員に対して最高のおもてなしを提供していただきたい」
市場調査やアンケート収集と分析を担う企業は数多くあるが、DX時代を踏まえてエクスペリエンスに着目し、XMというコンセプトを打ち出して改善アクションを含めたソリューションを体系化しているのがQualtricsの魅力だろう。同社が提唱したXMという市場が、熊代氏の冒頭のコメントにあるように、CRMやERPなどのように広がっていくか気になるところだ。
さらにエクスペリエンスは広い概念なので、Qualtricsとは異なったIoT(Internet of Things)やセンサー、ビッグデータ分析などを駆使したXMが今後、登場するかもしれない。そんな広がりも含めて、DX時代のポイントの1つになりそうなXMの動きには引き続き注目していきたい。
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