PCだけじゃ足りない 持続可能なテレワークに必要なモノ【前編】レノボが明かす学びと課題

企業の間でテレワークの需要が急速に高まっている。そんな中、2020年にテレワーク開始から14年目を迎えたレノボは、従業員に向けたテレワーク向けデバイスや制度、インフラなどについて知見を積み重ねてきた。同社が語る、従業員のモチベーションや作業の効率性、セキュリティなどを踏まえた現実的な準備の方法とは。

» 2020年03月16日 07時00分 公開
[阿久津良和ITmedia]

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 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行に伴い、人の移動が制限され、大規模イベントの開催が相次いで見送られるなど、経済活動に大きな影響が出ている。政府が企業に従業員の時差出勤やテレワークを呼びかける一方で、企業の間では「テレワークを導入しつつ、企業活動や従業員の生産性をどう維持するか」が課題になりつつある。

 政府自身は「ニッポン一億総活躍プラン」(2016年6月)を筆頭に、地方創生や女性活躍などの観点からテレワークの普及・推進に取り組んできた。だが、国土交通省が2019年3月に発表した「平成30年度テレワーク人口実態調査」(注)によれば、勤務先にテレワーク制度があると回答した割合は19.8%。まだまだ道半ばであることを数字が示している。

注:(調査期間:2018年11月、就業者を対象としたWebアンケート、有効回答数4万件)

 そんな中、2005年から段階的にテレワーク導入に取り組んできたのが、PCや企業向けソリューションを手掛けるレノボ・ジャパン(以下、レノボ)だ。従業員と組織と設備、3つの視点から長年テレワークと向き合ってきた同グループが明かす、持続可能なテレワークを実現する鍵とは? 前後編に分けてお届けする。

「いちいち理由は聞かない、前日承認でOK」でテレワークを実践

 レノボは2005年に週1回を上限としたテレワークを導入。2015年12月から取得回数に制限を設けない「無制限テレワーク」の試験導入を経て、2016年4月には正式運用を開始した。2016年3月からは、同じNECレノボ・ジャパングループ(以下、レノボグループ)傘下のレノボ・ジャパン、レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ、NECパーソナルコンピュータ、モトローラ・モビリティ・ジャパンの4社の従業員約2000人を対象に、年2回のタイミングで「全社一斉テレワークデー」を実施してきた。

NECパーソナルコンピュータおよびレノボ・ジャパンのデビッド・ベネット社長

 NECパーソナルコンピュータおよびレノボの社長を務めるデビッド・ベネット氏は、自らもテレワークを実践する。

 「朝は家族との時間を大切にしつつ、自宅からオンラインで経営会議に参加している。昼は本社に出勤してオンライン会議に参加する従業員とミーティング。弊社はテレワークが定着しているため、自宅からの報告も問題ない。夕方はプライベートタイムとして、子どもたちと夕食を取り、勉強を教えて、夜は時差がある他国とのミーティングに努める。経営層自らテレワークを実践する姿を見せるのが大事だ」(ベネット氏)

 レノボグループはテレワークを企業内に定着させるため「制度」「環境」「文化」の観点から取り組みを続けている。制度面では、テレワーク対象者や回数に制限を設けず、時間単位の利用も許可してきた。勤怠管理はオフィス在籍時と同じオンラインシステムを利用し、テレワークをしたい従業員は前日までにマネジャーから承認を取得する。

 興味深いのは、従業員がテレワークの実施を上長に申請する際、いちいち理由を申告しなくていい点だ。同グループのは元嶋亮太氏(レノボ・ジャパン コマーシャル事業部 企画本部 製品企画部 プロダクトマネジャー 兼 NECレノボ・ジャパングループ ワークスタイル・エバンジェリスト)は「テレワークによって、多くの従業員の生産性が上がると判断しているためだ」と説明する。

「PCさえあればできる」と思ったら大間違い テレワークを支える重要な設備とは

 環境面を見ると、全従業員の働き方に合わせたSIMスロット付きノートPCを配布している。ただし、約8割の従業員は広いデスクトップ環境を希望するため、14型モデルを選択している。さらに作業環境を改善するためモバイルモニターを求める従業員も少なくないという。それ以外にも、「テレワーク環境を支える要素」として同社が特に重視している設備がある。

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