非常事態に活躍するインターネットの「ウォッチメン」、ビッグブラザーは誰が見張るのか半径300メートルのIT(2/3 ページ)

» 2020年04月14日 07時00分 公開
[宮田健ITmedia]

「感染者が過去14日間のうちに濃厚接触したユーザーのスマートフォンに通知」具体的な仕組みは?

 登場人物は「アリス」と「ボブ」です。2人はサービスに対応するスマートフォンを持った状態で初めて出会い、10分ほど談笑します。その時、スマートフォンはそれぞれが持つ「匿名ID」を交換します。匿名IDとは、ユーザーごとに設定されデバイスのセキュアチップに保存される「Tracing Key」をもとに、24時間ごとに生成される「Daily Tracing Key」を、さらに一定期間(15分)でローテーションする「Rolling Proximity Identifier」として生成したもの。つまり、第三者が個人を特定できるようなデバイス固有のIDではありません。

 後日、ボブがCOVID-19に感染していたことが判明します。この時ボブが同意すれば、ボブがスマートフォンの中に保存している「過去14日間に交換した匿名IDのリスト」データを、クラウドにアップロードします。ここで重要なのは「ボブが匿名IDのアップロードを理解し、同意した上でなければ実行されない」点です。そしてクラウドにアップロードされた匿名IDリストは、対応デバイスを持つすべてのユーザーに一斉配信されます。

 さて、アリスにはなにが起きるのでしょうか。一斉配信された情報は、アリスのスマートフォンにも到着します。アリスのスマートフォンにはこれまで交換した匿名IDが保存されており、その中にはボブのIDも含まれています。端末の所有者に「感染者の匿名ID」があった場合、アリスのスマートフォンに「過去14日間に接触した人の中に、COVID-19陽性の人がいた」という通知が届きます。

 照会されるのは匿名IDのみなので、ボブの固有の情報は通知されません。また、アリスが持つ情報だけでは誰が感染者なのかを特定できません。クラウドにアップロードされるのは匿名IDリストのみなので、クラウドを運営する人間にも誰が感染者かは分かりません。こういった仕組みによってプライバシーを保護しつつ、濃厚接触した可能性のある人を判別できるのです。

 Googleはもう少し詳しい仕様も公開しています。とても参考になるので、こちらも併せてどうぞ。「個人を特定できないようにする」ために、どれだけ気をつかうものなのかという点について、個人情報を取り扱うすべての企業が学ぶべき資料だと思います。

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