では、7つの戦略と強化テーマにおける具体的な取り組みとはどのようなものか。それを端的に表したのが、表1である。この表の内容が、今回の主題である「企業がコロナ危機後のニューノーマルを見据えて取り組むべきこと」である。
表に対して鹿内氏がそれぞれに補足した説明の中から、興味深かった話をいくつか取り上げておこう。
1つ目の「コア顧客の保持・ロイヤリティー強化」については、オンラインの営業活動ではまず既存の顧客との関係強化に注力し、そこからつながる形で新規顧客を広げていくのが望ましい。また、ネット上での顧客との接点となるWebサイトのUXを磨き、顧客から見てコンタクトをスムーズにとりやすい仕組みづくりが重要となる。
3つ目の「業務での省人化・自動化の徹底」については、業務プロセスを見える化して人手が介在するところを最小化、さらには自動化する。「この領域では、RPA(ロボティックプロセスオートメーション)やワークフローシステムにAI(人工知能)を組み合わせたソリューションが、今後も進化していくだろう」(鹿内氏)と予測している。
5つ目の「バーチャル・機動的なワークスタイル」において最も注目されるのは「従業員の満足度向上」への取り組みだ。オンラインでのスムーズなワークフローやコミュニケーション、労務管理はさることながら、「今後はオンラインでも従業員自らがスキルアップを図っていけるような仕組みが求められるようになる」と鹿内氏は言う。
そして6つ目の「在宅態勢整備」については、すでに多くの企業が在宅勤務を実施しているが、実際に始めてみてテレワークに適用するVPN(仮想プライベート網)のキャパシティーに対する不安や、未就学児を抱えての在宅勤務の難しさなどが露呈してきている。「これらもニューノーマル時代では重要な問題として捉えるべきだ」というのが鹿内氏の見方だ。
あらためて見ると、図2と表1に記されている4つの実現目標と7つの戦略と強化テーマは、日本IBMにとってもコロナ危機後のニューノーマルを見据えた形の「ソリューションのベースとなる考え方」である。同社にとってはこれまでの危機管理などのコンサルティングサービスから調整して適用できるソリューションもあるが、前提となるニューノーマルの姿がまだまだ流動的な部分もあるので、現時点では新時代を見据えて顧客各社と議論を進めているという。
日本IBMが掲げている4つの実現目標と7つの戦略、強化テーマが、コロナ危機後のニューノーマルを見据えた企業の取り組みとしてベストな内容かどうかは分からない。ただし筆者が今回強調しておきたいのは、経営者は少なくともこれだけの範囲の問題意識を持っていないと、ニューノーマル時代には生きていけない可能性が高いということだ。
表1にあるように、コロナ危機対策で現在注目されている在宅勤務やBCP(事業継続計画)の話は短期のテーマだ。中期に並んでいる項目は、営業、財務、人事など企業の全部門に関わる話だ。
ただ、ニューノーマルは新しい時代の到来である。そこには新しいチャンスが必ずある。経営者にはぜひ守勢に立つのではなく、攻勢に打って出る気概を持って臨んでもらいたい。
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