JCBとみずほ銀が顧客ID情報の相互運用を検証へ 自己主権型/分散型アイデンティティー流通技術とはID情報の流通可否を個人が明示的に設定可能に

パーソナルデータ流通はサービスの利便性を高める一方で、安全性や情報のコントロールが問題とされる。利用者によるID情報のコントロールと事業者によるID情報の相互運用は安全に実装できるか。JCBとみずほ銀がサービス化を目指した相互運用の検証を始める。

» 2020年10月15日 13時10分 公開
[原田美穂ITmedia]

 ジェーシービー(以下、JCB)、みずほ銀行が個人の属性情報を活用する目的で異業種間のID情報の流通、連携を検証する共同実証実験を開始する。ID情報の流通可否を個人が制御できる仕組みも整備し、サービス品質を高める狙いだ。検証のシステム基盤を提供する富士通が2020年10月15日に発表した。

 検証はID情報流通の安全性検証の他、本人によるID情報流通のコントロールの仕組みも確認する。秘匿されるパーソナルデータとは別に取引情報を基にしたスコアなどを持てるため、パーソナルデータを流通させなくても信用情報を照会できるようになるなど、サービスの利便性向上が期待できる。

 具体的には、JCBとみずほ銀行が保有するID情報のうち、実証実験への参加を承諾したものについて、両者で相互に交換・連携する仕組みを検証する。検証の基盤は富士通のクラウドを採用する。実証実験の参加者はJCB、みずほ銀行と取引がある富士通国内グループ社員約100人。4カ月間の検証を予定する。

 クラウド基盤は、富士通研究所がブロックチェーン技術を使って開発した自己主権型/分散型アイデンティティー流通技術「IDYX」(IDentitY eXchange)を組み込む。元々JCBと富士通はID情報に関する共同研究を進めてきたが、今後は複数の事業者が持つ情報の連携や管理に関する技術検証が重要になるとして、みずほ銀行を加えID情報の相互運用モデルを検証することになったとしている。

 検証は次のような内容だ。

  • JCBとみずほ銀行がそれぞれで自社が保有する参加者のID情報の「電子証明書」を参加者に発行
  • 発行された電子証明書を使って参加者自身がID情報にアクセスし、本人が秘匿する項目、流通させる項目を設定
  • 秘匿すべき項目を維持したままのID情報をJCBもしくはみずほ銀行に連携する
実証実験の概要(出典:富士通)
実証実験でID情報の管理に使われるIDYXの画面イメージ(出典:富士通)

 個人情報を含むパーソナルデータをどう管理して流通させるか、各国で議論が進んでいる。日本の「情報銀行」に代表されるように個人が本人の意思によって信頼できる事業者に情報の運用を委託する方式もあれば、EU圏のようにパーソナルデータ管理責任を個人が負うことを前提とする方式もある。いずれにしてもパーソナルデータの流通に際して本人が任意のタイミングで流通の可否を選択できることが重視されている。

 今回の検証は、自己主権型のアイデンティティー流通技術を採用することで、本人が任意のタイミングで流通させる情報を安全にコントロールできるかどうか、その上で複数の事業者間でID情報を安全に流通させられるかを検証するものとなる。

 ここで検証のカギを握るのがIDYXだ。

IDYX(IDentitY eXchange)の実装は

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