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» 2020年11月27日 09時00分 公開

獲得、育成から強化まで、幅広い活用へ:選手が「100%活躍できる」チームへ モンテディオ山形がデータ活用で目指す強化の形

プロスポーツの世界でデータ活用が進む中、2020年にデータを使ってチームの強化を始めたのがモンテディオ山形だ。スカウトの目から先入観を取り去って選手のポテンシャルを見極め、チームで100%活躍できる状態に育てる――。そんな仕組みを構築する挑戦の軌跡と、未来への構想とは。

[高橋睦美,ITmedia]

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 プロスポーツの世界には、短い現役生活の間に、選手の努力や才能が必ずしも報われるとは限らない厳しさがある。

 IT専門の記者であると同時に、日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)のサポーターでもある筆者は、どこのチームであれ、選手移籍のプレスリリースを見るとわくわくしてしまう。しかし残念ながら、選手が思うように活躍できないまま終わるケースは少なくない。ケガに泣くこともあれば、チームや監督の戦術にフィットせずに、出場機会を逃すこともある。

 選手が他チームに移籍した後に活躍する姿を見ると、サポーターや関係者は喜びつつも、複雑な思いを味わうはずだ。選手がチームにきちんとフィットするかどうか、もしも最初から正しく見極められていたら、もっと良い結果が生まれていたはず、と――。

 選手とチーム、双方にとって残念な事態を減らすべく、データの力を活用したチーム強化に取り組むプロサッカーチームがある。2部リーグ(J2)のモンテディオ山形だ。

 強化方針にフィットする選手を見つけ出して獲得し、中長期的にチームを強化するため、同クラブは2020年にクラウドベースの人事システム「SAP SuccessFactors」を採用した。その狙いについて、強化部長を務める高山明泰氏に聞いた。

獲得候補選手の情報量が激増 「データの整理」が課題に

 普通の会社でも「人事」は難しい課題だ。従業員それぞれのポテンシャルを見抜き、適材適所に配置して、成果をきちんと評価する――。言葉にすると簡単だが、実現しようとすると一筋縄ではいかない。

 プロサッカーチームの場合、問題はさらにシビアだ。

モンテディオ山形の高山明泰氏(強化部長)(写真提供:モンテディオ山形)©MONTEDIO YAMAGATA

 高山氏はその厳しさを「勝ったか負けたかで結果がはっきり出る世界であり、普通の企業に比べると(評価の)スパンは短く、目的はより明確」と表現する。

 強化部は、チーム編成と育成、両方の役割を担う。予算の範囲内で結果を出せるチームを編成し、かつ選手のパフォーマンスを正しく評価しなければならない。チーム編成の判断を誤れば、戦力がばらばらになり、成績が低下してしまいかねない。悪い状態が続けば、下部リーグに降格させられてしまう可能性すらある。かといって目先の課題ばかりにとらわれ、育成を含めた中長期的なビジョンを見失うわけにはいかない。

 ぶれずに強いチームを作り上げ、1部リーグ(J1)や上位昇格を目指すべく、モンテディオ山形は以前から、選手の編成やスカウトといった活動のデジタル化に取り組んできた。

 「スカウト活動」と聞くと、現地に行って実際に選手のプレイを見る姿が思い浮かびやすい。だが実際は、その前に映像を見て「チームにフィットするか否か」を判断するステップがある。この段階でスカウト候補の絞り込みを進めた上で、一人一人の選手についてより詳しく見ていく。

 「以前から、より多くの選手に関する映像を見られる仕組みを作り上げ、情報量はだいぶ増えていました」と、高山氏は語る。

 「扱う情報量が多くなったことで、それらを整理し、どんな選手がチームに合うのか、チーム強化に向けて補強しなければいけないのはどのような選手か、といった要素をより掘り下げて見られるようにしたいと考えていました」(高山氏)

 モンテディオ山形の場合、ざっと1000人弱の選手に関する情報を把握しているそうだ。その中から強化の対象になる選手200〜300人をピックアップして関連する情報を集める。従来は「Microsoft Excel」で管理していたが、その整理が課題だった。

 「やはりこれだけの人数の選手を毎試合見ていくのは困難です。ランク付けをして、『今の移籍枠において、このポジションで欲しいのはこの選手だ』といった具合に重要度を分けて選手を見ていますが、やはりデータ量が増えれば増えるほど処理し切れない、整理し切れないことが課題になっていました」(高山氏)

「まずできることから始めた」 データ活用の中身とは

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