ナビタイムが開発チームのコラボ環境をSaaSに移行、9カ月の経験で分かったメリット、デメリット

従業員の約8割がエンジニアであるナビタイムにとって、コラボレーション環境の利用は必要不可欠だ。同社が9カ月間で実現した「Atlassian Server」を「Atlassian Cloud」に移行するまでのクラウドジャーニーから、クラウド移行に際しての課題や注目すべきポイントを紹介する。

» 2021年02月22日 07時00分 公開
[田渕聖人ITmedia]

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 ナビタイムジャパン(以下、ナビタイム)は、トータルナビゲーションサービスである「NAVITIME」やカーナビゲーションアプリの「NAVITIMEドライブサポーター」など、個人や法人向けの多岐にわたるサービスを展開する。サービスの月間ユニークユーザー数は5100万人以上、有料会員数は480万人を誇る。

 従業員の約8割がエンジニアであるナビタイムにとって、プロジェクトごとのタスク管理やソースコード管理、ナレッジの共有は必要不可欠だ。同社は2015年4月より、日々の開発をアトラシアンの課題管理ソフトウェアである「Jira Software」(以下、Jira)やソースコード管理サービス「Bitbucket」、ワークスペースソフトウェア「Confluence」のサーバ版を利用して進めてきた。

 アトラシアンが2021年2月17日に開催した「チーム」をテーマにしたイベントである「Team Tour Tokyo」の講演「ナビタイムジャパンとJourney to Cloud」は、ナビタイムが2020年4〜12月の9カ月間で「Atlassian Server」を「Atlassian Cloud」に移行するまでのクラウドジャーニーを紹介した。

 本稿は、ナビタイムの担当者が詳細に語ったクラウド移行検討の背景や課題、移行のメリット、デメリット、移行に際してのポイントなどを取り上げる。

Atlassian Serverでの運用は限界 クラウド移行の背景は

 ナビタイムはもともとAtlassian ServerをAWS(Amazon Web Services)に構築し、製品に応じたアクセスレベルを設定して運用していた。Bitbucketは社内からのみアクセスを許可し、JiraとConfluenceに関しては、クラウド型ID管理サービス(IDaaS:Identity as a Service)の「OneLogin」によるシングルサインオン(SSO)で社外からのアクセスを許可してきた。

 運用は、他のプロジェクトと兼務する8人で構成された開発サポートチームが担当してきた。チームには、年3回のバージョンアップを担当する「インフラ担当」と、アプリケーションへの問い合わせを担当する「サポート担当」を置いた。

ナビタイムにおけるAtlassian Serverのインフラ構成図(出典:ナビタイム)

 Atlassian Cloudへの移行を検討することになったのは、こうした専任チームによる運用に対して従業員から「アトラシアンの新機能」「クラウド型のCI(継続的インテグレーション)ツールやコラボレーションツール『Slack』との連携」の利用を望む声が多く上がったことが背景にある。

ナビタイム 経営推進部 情報システム/開発サポート部門 天野剛志氏

 ナビタイムの天野剛志氏(経営推進部 情報システム/開発サポート部門)によると、開発サポートチームにおいてもアップデートの検証は負担になっており、現状のAtlassian Serverでの運用が限界に達していたという。

 SaaSの普及によりクラウド移行を実施する企業が増加したこともこの動きを後押しした。ナビタイムは、これまでAtlassian Cloudを検討していたものの、コストの増加を理由に導入を断念していた。だがアトラシアンが積極的にAtlassian Cloudへの機能追加を実施するようになったことから、2020年1月に再度検討を開始した。調査の結果、Atlassian Cloudを導入することで以下の4つのメリットが得られると判明した。

Atlassian Cloudの導入 4つのメリットと3つのデメリットとは

 1つ目は、新機能のアップデートや脆弱(ぜいじゃく)性への自動対応だ。プレミアムプランであればSLA(Service Level Agreement:サービス水準合意)が99.9%と安定した運用が期待できる。

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