DellとHPEが挑む「ハードからソフトまでサブスク」戦略は奏功するか クラウドビジネスの視点から読み解くWeekly Memo(1/2 ページ)

Dellが全ての製品をサブスクリプション型のサービスとして提供するビジネスモデルの転換に力を入れ始めた。同様の動きはHPEも既に進めている。サーバやPCなどのハードウェア市場の2大ベンダーともいえる両社の相次ぐこうした動きは何を意味しているのか。

» 2021年06月14日 11時00分 公開
[松岡功ITmedia]

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 「これまでお客さまには基本的に当社の製品を買い取っていただいてきたが、これからはそれに加えて『as a Service』の形で利用していただけるようになる」

 Dell Technologies(以下、Dell)の日本法人デル・テクノロジーズ(以下、デル)代表取締役社長の大塚俊彦氏は2021年6月10日、事業方針について説明したオンライン記者会見で、今後の重点事業として新たなサービス型ビジネスモデルの導入を挙げた。

Photo デル・テクノロジーズ代表取締役社長の大塚俊彦氏

 実は、DellだけでなくHewlett Packard Enterprise(HPE)も同様のサービスに注力している。サーバやストレージ、PCなどのハードウェアで激しい市場競争を繰り広げる両社の相次ぐこうした動きが何を意味しているのか、考察してみたい。

クラウドからストレージまで“コト”消費へ Dell「APEX」の特徴は

 まずは直近で説明があったDellの動きを見ていこう。同社は2020年10月に「APEX」(エーペックス)と名付けた新たなサービス型ビジネスモデルの構想を発表した。そのコンセプトは、全ての製品をサブスクリプション(定額課金)型のサービスとして提供しようというものだ。

 APEXの詳細は2021年5月5〜6日にオンライン開催された「Dell Technologies World 2021」で明らかになった。今回の会見はその情報をデル最高技術責任者(CTO)の黒田晴彦氏が改めて日本向けに説明したものだ。ちなみに、APEXは欧米で既に提供されており、日本でも近く提供が始まる予定だ。

Photo デル・テクノロジーズCTOの黒田晴彦氏

 図1が、現時点におけるAPEXのサービス一覧だ。最大の注目点は左端にある「APEX CONSOLE」で、これがユーザーからすればAPEXの「窓口」となる。その窓口を通じて、左から「ストレージ」「クラウド」「支払い形態」「パートナーとの連携」といったサービスが利用できる。

Photo 図1 現在ラインアップされているAPEXのサービス(出典:デル・テクノロジーズ)

 図2が、先行ユーザーによるAPEXの活用事例である。左から、ストレージ、クラウド、支払い形態のサービスを使ってみた感想も記されている。「良いところ」ばかりではあるが、これらのコメントにそれぞれのサービスのメリットが集約されているともいえよう。

Photo 図2 先行ユーザーによるAPEXの活用事例(出典:デル・テクノロジーズ)

 図3が、APEXで想定されるユースケースを4つ挙げ、それぞれのベネフィットを記したものだ。ユースケースのポイントとして、左から、経費で支払いができることを指す「資本の保全」、ハードウェアを保有しないことによる「IT負債の除去」、どこにでもサービスが適用可能なことを指す「エッジ」、データの保管場所が明確だからこその「機密データ管理」を挙げている。

Photo 図3 APEXにおいて想定されるユースケースとベネフィット(出典:デル・テクノロジーズ)

 黒田氏は図4を示しながら、「デルにとってAPEXを展開するということは、さまざまな部門が関わる新たな挑戦であり、自らの『トランスフォーメーション(変革)』であると肝に銘じている」との決意を語った。

Photo 図4 デルにとってAPEXはさまざまな部門が関わる新たな挑戦(出典:デル・テクノロジーズ)
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