東京電力の挑戦 レガシーシステムを抱えつついかにDXを進めるか【前編】「DXリーダーに聞く」 エネルギー×DX(1/2 ページ)

日本における電力関連データの約3分の1を保有する「データソースカンパニー」である東京電力は、膨大なデータをいかに生かしてDXを進めるか。また、DX推進を阻む課題とその解決法とは。

» 2022年01月18日 12時05分 公開
[田中広美ITmedia]

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2022年1月26日午後7時更新

東京電力から提供を受け、「図1 DX戦略の概要」を追加しました。これを受け、「図1 DX推進の3段階」を「図2 DX推進の3段階」に変更しました。

 日本の産業の土台を支えるエネルギー業界においてデジタルトランスフォーメーション(DX)はどのように進むのか。DX推進における課題は何か。そして、DX進展後のエネルギー業界はどのような様相になるのか。

 「デジタルリーダーに聞く エネルギー×DX」の第1回目となる今回は、東京電力ホールディングス(以下、東京電力)常務執行役で最高情報責任者(CIO)と最高情報セキュリティ責任者(CISO)を兼務する関 知道氏に話を聞く。

 東京電力グループは膨大な設備と顧客数を誇るエネルギー業界の「巨人」であるがゆえのレガシーシステムという課題を抱える。また、2011年の東日本大震災直後に起きた福島第一原子力発電所事故で被害を受けた人々への賠償責任も負う。こうした中で東京電力がDXに関してどのような展望を描き、足元でどのような課題を抱え、それを解決するためにどのような施策を打つのか――これらを把握することで、今後のエネルギー業界におけるDX進展の道筋が垣間見えるのではないか。

電力データ全体の約3分の1を保有する「データソースカンパニー」 

 DXを推進する動機は企業によってさまざまだが、東京電力はDXをどう位置付けるのか。「当社の経営目標であるカーボンニュートラルや防災といった『社会的な課題の解決』と『稼ぐ力の創造』を実現するために欠かせない経営革新、企業文化の変革とそれを成し遂げる変革人材の育成のためにDXを進めなければいけない」と関氏は話す(以下、断りのない発言は全て関氏によるもの)。

東京電力ホールディングス 常務執行役CIO兼CISO 関 知道氏 東京電力ホールディングス 常務執行役CIO兼CISO 関 知道氏

 まず、関氏とDXとの関わりを紹介しよう。関氏は東京電力入社後、技術開発研究所でOT(Operational Technology:制御技術)を研究した後、発電所出力最適化や需要予測を中心としたデータ分析に携わった。経営企画本部異動後は電力自由化におけるITシステムに関する官庁等との交渉を担当。2016年に常務執行役に就任し、CIO、CISOを兼務する。

 DX推進における自身の役割について、「DXという言葉がまだ存在しない頃から、データをもっとオープンにしなくてはと社内で議論してきた」と語る。

データをもっとオープンに

 関氏が語る「データをもっとオープンに」は、東京電力が描くDX戦略の根幹だ。東京電力が年1回発行する統合報告書の最新版『TEPCO 統合報告書2020−2021』(注1)には、DX戦略の概要として「TEPCOグループのデータリソースを、オープンな共創環境と連携させることにより、社会的な課題解決に貢献する新ビジネスの創造をめざします」とある。

 では、東京電力が保有するデータ量はどのぐらいあるのか。

図1 DX戦略の概要(出典:『TEPCO 統合報告書2020−2021』) 図1 DX戦略の概要(出典:『TEPCO 統合報告書2020−2021』)
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